創業者の歩み

少年期の石橋正二郎は、無口で照れ屋な子供でした。体が弱く、本人も「(学校は)欠席がちで、ロクに運動もできなかった」と回想しています。
しかし、友達とは仲が良く、喧嘩は一度もしたことがありませんでした。また勉強においてはとても優秀な成績を修めており、小学校は首席で卒業。当時は全国でも数の少なかった商業学校の一つである久留米商業学校に、九州各地から受験生が集まる中、最年少で合格します。
正二郎が久留米商業学校三年生になったある日、事件が起こりました。年上で不良の生徒たちが、成績が悪く落第させられたことを恨み、学校に対してストライキを起こそうというのです。非は不良の生徒の側にあると考え、「正義感にかられて初めから反対していた」という正二郎。周囲の友達にもストライキに参加しないよう説得しましたが、大半が不良たちの迫力に負け、参加してしまいます。ところが正二郎と友人の二人だけは、どれだけ恐ろしくてもぐっとこらえ、正義に反して団結するのが友情ではない、と最後まで連判状に署名することはありませんで した。
その後退学処分を下された不良たちが、正二郎たちを逆恨みし、通学路で待ち伏せをしました。しかし、ストライキに参加し停学処分を受けていた友人がそのことをそっと知らせてくれたので、正二郎は難を逃れることができました。一度は孤立しても、友人たちの信頼を失ってはいなかったのです。
信念を曲げて多数派に同調するのではなく、自分の信念に基づいて行動する。当時から持っていたこの姿勢を、正二郎は生涯失うことはありませんでした。
*本文中は敬称略
参考文献:「私の歩み」(石橋正二郎著)
「石橋正二郎」(小島直記著・ブリヂストンタイヤ(株)刊)
「ふるさと久留米の偉人伝 ブリヂストン創業者 石橋正二郎物語 世の人々の楽しみと幸福の為に」(田中敬子著・くるめ めいきょう 郷土の先人編集委員会刊)