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フレキシブルな供給体制を築き、高品質のタイヤを世界のお客様へ

2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックは、タイヤの安定供給にも多大な影響をもたらしました。
さらに、北米でのサイバー攻撃やウクライナ危機といった予期せぬ事態が次々と発生。前例のない物流危機のなかで、関連部門は、お客様にタイヤを届けるために奔走し続けていました。
今回は、BGA2022の受賞案件でもある「Flexible and Agile Global SCM」をピックアップ。タイヤの供給オペレーションに携わった皆さんにお話を伺いました!
さらに、北米でのサイバー攻撃やウクライナ危機といった予期せぬ事態が次々と発生。前例のない物流危機のなかで、関連部門は、お客様にタイヤを届けるために奔走し続けていました。
今回は、BGA2022の受賞案件でもある「Flexible and Agile Global SCM」をピックアップ。タイヤの供給オペレーションに携わった皆さんにお話を伺いました!
船舶での輸送費が10倍に高騰
――コロナ禍当時、製品供給の現場はどのような状況だったのでしょうか?
西本 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年は、グローバルでタイヤの販売は大きく落ち込みました。ただ、2021年に入って、トラックやバスなどのタイヤ(以下、TBR)需要が急回復したことで、競合も含めて世界的にTBR不足が発生しました。
佐土原 輸送面では、中国と北米を結ぶ船舶輸送が急増し、日本の港に船が立ち寄らなくなってしまったため、日本で作ったタイヤを海外に運べない事態に。船賃はコロナ禍の前の10倍に高騰し、契約があっても積んでもらえないケースも少なくありませんでした。何とか載せることができても、現地の港も混雑しており、現地に届くまで通常よりも1〜2カ月長くかかることも。現地からは「タイヤが届かない!」という悲鳴も聞こえてきました。我々としては、日々、数十の船会社・フォワーダー※に連絡して何とか運んでもらうスペースを確保しようと交渉に当たりました。コンテナ船ではなくRORO船と呼ばれる自動車輸送船に運んでもらったり、コンテナ自体も不足していたので、急遽木材で代用コンテナを準備したりといった工夫も。輸送の足を確保するために、できることには全て取り組みました。
※ フォワーダー:自らは輸送手段を持たず、国際物流の輸送業務を仲介する事業者のこと
佐土原 輸送面では、中国と北米を結ぶ船舶輸送が急増し、日本の港に船が立ち寄らなくなってしまったため、日本で作ったタイヤを海外に運べない事態に。船賃はコロナ禍の前の10倍に高騰し、契約があっても積んでもらえないケースも少なくありませんでした。何とか載せることができても、現地の港も混雑しており、現地に届くまで通常よりも1〜2カ月長くかかることも。現地からは「タイヤが届かない!」という悲鳴も聞こえてきました。我々としては、日々、数十の船会社・フォワーダー※に連絡して何とか運んでもらうスペースを確保しようと交渉に当たりました。コンテナ船ではなくRORO船と呼ばれる自動車輸送船に運んでもらったり、コンテナ自体も不足していたので、急遽木材で代用コンテナを準備したりといった工夫も。輸送の足を確保するために、できることには全て取り組みました。
※ フォワーダー:自らは輸送手段を持たず、国際物流の輸送業務を仲介する事業者のこと
福光 供給面でも新型コロナウイルスの影響は大きく、工場での人員体制が通常レベルまで整わないこともありました。また、回復してきた需要も、コロナ禍の前まで戻るのか、あるいはそれ以上になるのか。中期的に見て、どれくらい供給量を確保していくか、難しい判断を迫られました。
西本 それぞれのSBUでどれだけ需要が戻ってくるかについても、地域による事情の違いなどもあって読みづらい状況でした。
髙賀 生産と販売の供給バランスが崩れ、これまで経験したことのない状況でした。更に船賃のほか原材料価格も高騰し、コスト構造も大きく変化しました。そのなかで、競争力を維持するために、何が最適なのか、どの地域に限られたタイヤを振り分けるのが良いのか、それぞれの部署で考え、連携しました。製造部門が作ってくれたタイヤを販売現場のお客さまに確実に届ける。そのための挑戦の日々でしたね。
佐土原 お客様からお叱りをいただく事もありましたが、競合メーカーと比べれば、ブリヂストンは確実に対応できていたと思います。厳しいなかでも確実に供給量を増やしていくことができましたから。
西本 それぞれのSBUでどれだけ需要が戻ってくるかについても、地域による事情の違いなどもあって読みづらい状況でした。
髙賀 生産と販売の供給バランスが崩れ、これまで経験したことのない状況でした。更に船賃のほか原材料価格も高騰し、コスト構造も大きく変化しました。そのなかで、競争力を維持するために、何が最適なのか、どの地域に限られたタイヤを振り分けるのが良いのか、それぞれの部署で考え、連携しました。製造部門が作ってくれたタイヤを販売現場のお客さまに確実に届ける。そのための挑戦の日々でしたね。
佐土原 お客様からお叱りをいただく事もありましたが、競合メーカーと比べれば、ブリヂストンは確実に対応できていたと思います。厳しいなかでも確実に供給量を増やしていくことができましたから。
ウクライナ危機と北米サイバー攻撃への対応
――その後も予期せぬ事態が続きました。
西本 そうですね。ようやくコロナ禍が収束に向かいつつあるかと思ったところで起きたウクライナ危機は、私にとってはコロナ禍以上に影響が大きかったです。私はちょうど業務を前任者から引き継いだばかりでしたが、ロシア向けの出荷は全て停止に。3万本のタイヤをどうやって欧州の他の地域に振り替えるか頭を悩ませました。振り替え出荷をするための社内データの更新や、それに伴う船積み業務など、佐土原さんのチームと連携して取り組みました。非常に時間と工数はかかりましたが、製造したタイヤを少しでも無駄にせず供給できてよかったです。
佐土原 出荷したものの、ロシアに入れないまま宙に浮いてしまったタイヤもありました。また、在庫となってしまったタイヤの倉庫料の負担も大きく、1日も早く出荷しないといけない。運んでくれるルート探しだけでなく、利益面も見ながらどこに届けるべきなのか、頭を悩ましました。
福光 逆に、ロシアの工場では生産が停止となり、冬商戦のタイヤが作れなくなってしまったため、日本やアジアから欧州への供給体制も確立していく必要がありました。もちろん、今日言われて明日生産が立ち上がるものではありません。本来であれば4~5カ月はかかるプロセスを、1カ月強にまで短縮できたのは、設計の皆さんのご提案や工場の皆さんのご協力のおかげです。
髙賀 SBUを跨いでタイヤを供給するためには、従来の方法を変える必要がありました。異なる供給元からのバックアップを確保し、ロシア市場向けの物流で浮いたキャパシティをどう活用していくか、綱渡りが続きました。
西本 そうですね。ようやくコロナ禍が収束に向かいつつあるかと思ったところで起きたウクライナ危機は、私にとってはコロナ禍以上に影響が大きかったです。私はちょうど業務を前任者から引き継いだばかりでしたが、ロシア向けの出荷は全て停止に。3万本のタイヤをどうやって欧州の他の地域に振り替えるか頭を悩ませました。振り替え出荷をするための社内データの更新や、それに伴う船積み業務など、佐土原さんのチームと連携して取り組みました。非常に時間と工数はかかりましたが、製造したタイヤを少しでも無駄にせず供給できてよかったです。
佐土原 出荷したものの、ロシアに入れないまま宙に浮いてしまったタイヤもありました。また、在庫となってしまったタイヤの倉庫料の負担も大きく、1日も早く出荷しないといけない。運んでくれるルート探しだけでなく、利益面も見ながらどこに届けるべきなのか、頭を悩ましました。
福光 逆に、ロシアの工場では生産が停止となり、冬商戦のタイヤが作れなくなってしまったため、日本やアジアから欧州への供給体制も確立していく必要がありました。もちろん、今日言われて明日生産が立ち上がるものではありません。本来であれば4~5カ月はかかるプロセスを、1カ月強にまで短縮できたのは、設計の皆さんのご提案や工場の皆さんのご協力のおかげです。
髙賀 SBUを跨いでタイヤを供給するためには、従来の方法を変える必要がありました。異なる供給元からのバックアップを確保し、ロシア市場向けの物流で浮いたキャパシティをどう活用していくか、綱渡りが続きました。
――昨年は、北米サイバー攻撃で工場の稼働がストップしました。
髙賀 北米はブリヂストンにとって最も大きな市場です。他拠点からのサポートとして絶対に必要なのは、北米の工場で作っているものと同じ性能、同じ規格のタイヤを作ること。単に製造元を代えれば済むものではありません。設備が違えば原材料も違ってきます。全く同じ性能のタイヤを立ち上げるのは簡単ではありません。しかし、ブリヂストンでは、コロナ禍の経験も活かし、不測の事態にあっても別の拠点から同じ品質のタイヤを供給できるフレキシブルな体制が確立されています。これは競合にはない、ブリヂストンの大きな強みだと言えるでしょう。
髙賀 北米はブリヂストンにとって最も大きな市場です。他拠点からのサポートとして絶対に必要なのは、北米の工場で作っているものと同じ性能、同じ規格のタイヤを作ること。単に製造元を代えれば済むものではありません。設備が違えば原材料も違ってきます。全く同じ性能のタイヤを立ち上げるのは簡単ではありません。しかし、ブリヂストンでは、コロナ禍の経験も活かし、不測の事態にあっても別の拠点から同じ品質のタイヤを供給できるフレキシブルな体制が確立されています。これは競合にはない、ブリヂストンの大きな強みだと言えるでしょう。
活動を通じて実現したBridgestone E8 Commitment
――Bridgestone E8 Commitmentの観点から、一連の取り組みはどのような貢献ができたとお考えになりますか。
西本 我々の課ではEfficiency(モビリティを支え、オペレーションの生産性を最大化する)でしょうか。広大な担当市場で、現地の日々変化する状況を踏まえ、フレキシブルにタイヤの供給計画を見直し、利益も見据えて最適化を図り、効率的に供給していくことがミッションでもあり、貢献でもあります。
福光 そうですね。今回の取り組みに限らず、供給する製品の立ち上げにおいては、開発する人も、立ち上げる工場も、リソースには上限があります。制約があるなかで、市場に必要とされる製品の生産をいかに効率よく立ち上げるという観点は大切です。
西本 我々の課ではEfficiency(モビリティを支え、オペレーションの生産性を最大化する)でしょうか。広大な担当市場で、現地の日々変化する状況を踏まえ、フレキシブルにタイヤの供給計画を見直し、利益も見据えて最適化を図り、効率的に供給していくことがミッションでもあり、貢献でもあります。
福光 そうですね。今回の取り組みに限らず、供給する製品の立ち上げにおいては、開発する人も、立ち上げる工場も、リソースには上限があります。制約があるなかで、市場に必要とされる製品の生産をいかに効率よく立ち上げるという観点は大切です。
佐土原 私自身としては、Ease(より安心で心地よいモビリティライフを支える)を意識していました。ブリヂストンの、安全で快適な運転を提供するタイヤを一本でも多く、お客さまに供給することが私たちの責任であり、コロナ禍においても常に意識してきたことだからです。
髙賀 Economy(モビリティとオペレーションの経済価値を最大化する)も大切にしたいところです。今、お話しにあったとおり、限られたリソースで、経済的利益の大きい市場にいかに効率的に供給するという視点も必要です。部門としてVolume to Value、価値を生み出すことを意識して、最適な供給先を決定しています。グループ全体としてFlexible & Agileを志向するなかで、私たちの部門ではそれを落とし込んだRisk & Opportunityの発想で、考えられるリスクを想定し、可能性を探りつつ検討を進めていく姿勢はこれから更に強化させていきます。
髙賀 Economy(モビリティとオペレーションの経済価値を最大化する)も大切にしたいところです。今、お話しにあったとおり、限られたリソースで、経済的利益の大きい市場にいかに効率的に供給するという視点も必要です。部門としてVolume to Value、価値を生み出すことを意識して、最適な供給先を決定しています。グループ全体としてFlexible & Agileを志向するなかで、私たちの部門ではそれを落とし込んだRisk & Opportunityの発想で、考えられるリスクを想定し、可能性を探りつつ検討を進めていく姿勢はこれから更に強化させていきます。
リスクを見極め、機会をつかむ
福光 高賀さんが言われたリスクを長期的に見据えて、長いスパンで必要な製品、必要な技術を見極めることが大切だと思います。それが、予期せぬ事態が起きても強固なサプライチェーンを維持できる体制作りにもつながっていきます。
西本 振り返ってみると、従来の供給の仕事は、部門の中だけで成り立ってしまっていたと感じます。さまざまな事態に対応するために、部門を越えての協業の機会を持つことができて、定例で情報共有も進められています。今後、この連携を活かし、仕組み化していくことでグローバル供給体制を充実させていきたいですね。特に、各SBUの状況をより早く、より詳しく把握することで、需要のアップダウンにもより柔軟に対応できるようになると思います。
西本 振り返ってみると、従来の供給の仕事は、部門の中だけで成り立ってしまっていたと感じます。さまざまな事態に対応するために、部門を越えての協業の機会を持つことができて、定例で情報共有も進められています。今後、この連携を活かし、仕組み化していくことでグローバル供給体制を充実させていきたいですね。特に、各SBUの状況をより早く、より詳しく把握することで、需要のアップダウンにもより柔軟に対応できるようになると思います。
髙賀 タイヤの性能は向上し続けており、求められる基準もよりシビアになると、同じ性能のタイヤを複数の工場で製造することはより難しくなっています。設計部門とタッグを組んで、フレキシビリティの維持、向上に一緒に取り組んでいきます。
佐土原 船積みの輸送費は、ほぼコロナ禍前の水準に戻ってきましたが、各SBUと共同でグローバルでの船会社との海上輸送長期契約の年次交渉を実施しています。従来の交渉の枠組みやプロセスを変更し、合わせて我々の物流のデータを活用し、見える化も行うことで、船の確保と競争力のある運賃価格改訂につなげることもできています。また、船会社との日頃からのコミュニケーションが非常時にも生きてくるはず。彼らとのWin-Winの関係づくり、関係強化にも取り組んでいきます。
佐土原 船積みの輸送費は、ほぼコロナ禍前の水準に戻ってきましたが、各SBUと共同でグローバルでの船会社との海上輸送長期契約の年次交渉を実施しています。従来の交渉の枠組みやプロセスを変更し、合わせて我々の物流のデータを活用し、見える化も行うことで、船の確保と競争力のある運賃価格改訂につなげることもできています。また、船会社との日頃からのコミュニケーションが非常時にも生きてくるはず。彼らとのWin-Winの関係づくり、関係強化にも取り組んでいきます。
常に先読みしたスムーズな供給を
――最後に、従業員の皆さんにメッセージをお願いします。
西本 一緒に困難を乗り越えてくださった皆さんに感謝します。特に出荷の実務を担うブリヂストン物流(株)の皆さんには、かなり無理を申し上げましたが、一緒に問題解決に取り組んでくださったことをありがたく思っています。何があっても安定した供給を実現していくことが私たちの責務。常に状況を先読みしてスムーズな供給に努めていきます。
佐土原 そうですね。オペレーションの最後の砦、実際に船積みを担当してくださった方々の努力には頭が下がります。また非常に厳しいなかでサポートいただいた皆様にもお礼を言いたいです。今後も最高の品質のタイヤを1本でも多くお客様に供給できるように努めていきたいと思います。
髙賀 各SBUのサプライチェーンのチームの皆さんと一緒に検討を進めてきました。それぞれの市場でニーズを把握してくださったメンバーにも感謝したいです。
福光 設計や製造の皆さんの日々のご協力に感謝しています。引き続き、生産計画から製造、需要の把握、輸送まで一連の供給を担う部門が協力して責任を果たしていきますので、今後ともご協力をお願いします。
西本 一緒に困難を乗り越えてくださった皆さんに感謝します。特に出荷の実務を担うブリヂストン物流(株)の皆さんには、かなり無理を申し上げましたが、一緒に問題解決に取り組んでくださったことをありがたく思っています。何があっても安定した供給を実現していくことが私たちの責務。常に状況を先読みしてスムーズな供給に努めていきます。
佐土原 そうですね。オペレーションの最後の砦、実際に船積みを担当してくださった方々の努力には頭が下がります。また非常に厳しいなかでサポートいただいた皆様にもお礼を言いたいです。今後も最高の品質のタイヤを1本でも多くお客様に供給できるように努めていきたいと思います。
髙賀 各SBUのサプライチェーンのチームの皆さんと一緒に検討を進めてきました。それぞれの市場でニーズを把握してくださったメンバーにも感謝したいです。
福光 設計や製造の皆さんの日々のご協力に感謝しています。引き続き、生産計画から製造、需要の把握、輸送まで一連の供給を担う部門が協力して責任を果たしていきますので、今後ともご協力をお願いします。
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管理者にて確認の上、反映されます。コメント掲載基準については こちら をご覧ください。
尚、投稿者につきましては、管理者でも特定できない仕様になっております。