腰は低く、プライドは高く、自分の頭で考えてチャレンジを
今回も前編記事に続き、ミーティングの模様や、お二人からのメッセージご紹介します。

「お金」という形で利益に直結しない取り組みについて、ブリヂストンはどのような志を持って取り組んでいるか、教えていただけますか?

世間が企業に対してサステナビリティの面で期待することは、今や当たり前になっています。ひと昔前までは、サステナビリティ=環境や気候変動に関すること、と連想されることが多かったのですが、今は地球上の生命が存続し、幸福でいるために、という広い視点になっています。ブリヂストンの取り組みで例を挙げると、月面探査は人類がこれから暮らしていく場所を探索するため。オリンピック・パラリンピックへの協賛は、ダイバーシティや心身の健康にどう貢献するかという思考の反映です。企業なので、利益を追求することは当然ですが、それだけではいけない時代です。社会課題をどう解決するか。ブリヂストンのビジョン「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」の実現のために、ビジネスと並行して、こういった取り組みも欠かせません。

お金とは別に「無形資産」という形の利益についても考えると良いと思います。「ブリヂストンは凄いんだ!」というイメージを世間の皆さんに持ってもらうこと。これはとてつもない無形資産です。また、モータースポーツのドライバーがマシンを通じて感じることは、定量的には測れないことばかりです。この測れないことをなんとか測ってやろうと皆が頑張るので、モータースポーツを通じて、計測技術はものすごく発達します。月面探査の例だと、月面には誰もが気軽に行くことはできませんが、地球上で、月面を一生懸命イメージする。こういった取り組みのおかげでシミュレーション技術のレベルも上がります。お金とは違う形で得られるものって多いんですよね。

私は優柔不断なのですが、大きな決断をするときに、何を基準にしていますか?

私も自分が優柔不断だなと思うことはあります。さまざまな要素を考えると、決断が難しくなることもあるのですが、大事なのは「原理原則に戻ること」です。目的を達成するために、最も効果的なものは?必要なステップは?こういったものを自分の中でクリアにし、必要なものを積み上げていく。こういうことをずっとやってきました。また、ビジネスにおいては、必ずしも正解は一つではありません。その時は「決めたことを正解にする」という考え方もあります。決めたことを正解にするために何をすべきか、これも大事な考え方の一つだと思います。

かつて、自分の上司に「何も決めない人」がいました。ただ、その人は「どうしたらいいと思う?」と必ず部下に聞くんです。チームの意見を議論のテーブルに並べて、最終的な方向性を自然に示していくことがとても上手な方でした。その上司のおかげで、「必ずしも自分で決断をしないと、マネジメントが出来ないというわけでは無いんだな。」という気づきになりました。ぜひ、皆さんもいろんな人の考え方を学んで欲しいですね。

仕事をする際や、人を評価する際に大事にしている価値観を教えてください。

自分が楽観的な性格なこともあるのですが、「なんとかなると思うこと」ですかね。ただ後で、「何でなんとかなったのか?」という要因の分析や振り返りをすることはとても大切です。これは必ず行うようにしています。

普通のことを普通にやるのではなく、「自分の限界にチャレンジして成し遂げる」ということですね。私も仕事を楽しくやれたらいいなと思うのですが、実際にさまざまな事態に直面しているときは大変なので、これまではそういう風に思えなかったです。非常に難しいタスクや、自分の能力以上のことを発揮しないと成し遂げられない仕事に取り組んでいるときは、「楽しい」ではなく、「苦しい」と感じます。ただ後で振り返ってみると、「あの仕事をやっているときは大変と感じていたけど、実は楽しかったのかな」と思うことはあります。記憶に残っているのはそういう大変な仕事ですね。大きな達成感を得るには、チャレンジして成し遂げる。ということが必要なのかなと思います。

さまざまなチームのリーダーを経験されてきたと思いますが、人に指示をする際に意識していることはありますか?

一つは、指示を受けた人が「何のためにやっているのかわからない」という状態にならないよう、「なぜやっているのか」を必ず伝えるようにしています。もう一つは、「相手がベストを尽くしてくれている時に、感謝の気持ちは忘れない」ようにしています。仕事ですので時には厳しいことを言う必要もありますが、それは仕事に対して言っているのであって、相手の人格や、感情を傷つけるために言っているわけではありません。このことは相手に理解してもらえるよう、心がけています。

どんなチーム、どんな職種でも、「チームメイトのキャラを立ててあげること」が大事だと思っています。誰が何に対してモチベーションが高いのか、どこで笑って、どこで腹を立てるのか。そういったことを考えて、メンバーのキャラを立てることがリーダーにとっては大事かなと思います。

若手の頃から今の立場になって、新しく見えてきたこと、もしくは見えにくくなってきたことはありますか?

さまざまな経験を積んで、「現場で働く方々が、自らやりがいを感じて仕事をしているかは感じられるようになった」と思います。例えば製造現場に足を運んで、きれいな状態に保たれている工程を見ると、やりがいを持ち時間をかけてつくりあげた状態か否かはわかる気がします。一方で、少し話が矛盾するかもしれませんが、ルールが守られている職場でも、それがルールの本質を理解した自発的な行動か否かを知るには時間がかかると今でも思っています。要は、わかる面、わからない面の双方があるということです。この、わからない面もある、ということを意識することは大事だと思いますね。

今は、「さまざまな視点でものごとを見られるようになった」と思います。ブリヂストンにはいくつもの現場があります。例えば廃品調査ではスクラップタイヤをカットして中身を調べたり、技術サービスの立場でお客様と向き合ったり、もちろん、商品を製造する現場もあります。こういった多様な現場や立場を経験して、今は目の前で起きている問題を、さまざまな視点から見られるようになりました。感覚的には直感に近いのですが、技術や経験に基づいた直感が働くようなイメージですね。逆に今、難しくなったことは、先の質問でお答えした、リーダーとしてキャラを立てることです。小平地区の約3000人の従業員を統括する立場になり、全員のキャラを掴むことに四苦八苦しています。日々頑張っている最中です。

皆さんが通っていた大学では、授業料を払って授業を受ける「権利」がありました。ただ、会社ではお給料を貰って成果を出す「義務」があります。この違いをしっかり理解してほしいです。また、「腰は低く、プライドは高く」というのを若い人にはいつも言っています。料理の世界でも最初は皿洗いがスタートです。新人の皆さんは腰を低くせざるを得ないと思いますが、一方で、皆さんは世界のブリヂストンのメンバーでもあります。プライドは高く持ってほしいですし、自分の夢を持って仕事に取り組んで欲しいと思います。

せっかくブリヂストンを選んでいただいたので、ブリヂストンを好きになってほしいですし、ブリヂストンで働いたことが、皆さんの人生にとって良い選択になればと思います。また、会社は出来る限りの機会を皆さんに提供しますが、それが皆さんの記憶に残るような経験になり、成長につながるかは皆さん次第です。自分の頭で考えることが、新しいチャレンジや、厳しい局面の打破にもつながっていきます。頑張ってください。
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