レーサーと評価ライダーの違いとは
「速く上手く走る」ことだけが評価ではない

森兼さんも今野さんも元々はプロのレーサーとお聞きしました。

そうですね。ずいぶん前になりますが、元々はバイクのレースに参戦していました。2003年にブリヂストンに入社し、20年以上MCタイヤの実車評価に携わっています。

私も昨年までレースをメインに活動をしてきました。昨年末に入社して、評価ライダーとしては4か月。まだまだ見習いの未熟者です。

レーサーの経験は、どのように実車評価に生きているのでしょうか。

速く走る、バイクを深く寝かせて走るといった技術はレーサーの技量が生きるところですが、市販用タイヤの実車評価に必要なのはそれだけではありません。レースではとにかく速く走ることが求められるのに対し、公道を走る市販用タイヤはゆっくり走ることも大事ですし、幅広い使われ方を想定した条件で評価することが求められます。

実車評価にはどのようなスキルが必要なのですか?

評価ライダーには、「できる」「分かる」「言える」のスキルが求められます。評価に必要な運転ができる、タイヤや車両などの違いが分かる、結果を分かりやすく伝えられる、これら3つのスキルが必要です。評価に必要な運転技量で言うと、安定して走る以外にも、一般ライダーはいろんな路面を走るので、凸凹した路面も想定してわざと車体を揺らして不安定に走ることもありますし、逆に、同じ走行を何度も繰り返し、性能の再現性を確認する必要もあります。ただ上手に乗れば良いという訳ではないんです。

自分が乗りやすい方法で乗れば良いという訳ではなく、幅広い使われ方を想定して乗らないといけない難しさがあるんですね!

この難しさは、まさに今野さんが実感しているところかと思います。

おっしゃる通りで、一般ライダーの目線に合わせて再現性高く評価するコツを学んでいるところです。例えば、3種類のタイヤをテストする場合は、どのタイヤでも同じように走らないといけません。ただ、レース用タイヤのように極限の状況でタイヤの限界を評価するわけではないので、性能の差が結果に表れにくいのです。性能がいいタイヤで速く走るだけではなく、一般ライダーの走行をイメージして、どれだけ安心して走れるかを見極めて評価していくところが難しいですね。

評価するには、タイヤ構造などの設計要素と実車操安性能との関係性を知識として持っておく必要もあります。私は過去にMCタイヤ設計業務を経験し、その時の知識が役に立っていますし、同様の知識を持った他の評価者とも知見を共有し、知識を高めあっています。現在も日々現物現場でタイヤを見て勉強もしています。こうした知識と経験の積み重ねが「分かる」「言える」能力の向上や、設計者との信頼関係につながります。

その他にも、評価ライダーとしてスキルアップのために取り組んでいることはありますか。

実車評価を安全に精度よく行うためには、日々のトレーニングや体調管理は欠かせません。目や身体をスピードに慣らすためのサーキット走行や、車両挙動理解のためのオフロード走行などは、評価者全員が定期的に行っています。冷静に走り、良い評価ができることで、結果として良いタイヤ開発につながります。つまり「タイヤも評価者も鍛え上げる」といった感じでしょうか。
評価ライダーの経験をレースで生かす

今野さんは、プロのレーサーとしての活動は今後も続けていくのでしょうか。

レーサーとしての活動を継続していくなかで、レースという極限の環境下で自分の技量を磨き続け、実車評価の幅を広げたいと考えています。私も森兼さんのような評価者を目指し、早く一人前になりたいと思っています。バイクに乗った結果が新商品として形になる仕事は、やりがいを感じます。

国内最大級のオートバイレース「鈴鹿8耐」に今年も出られるんですよね。

まだ不確定な部分がありますが、今年参戦すると19回目の挑戦になります。表彰台に迫った時期もありましたが、昨年は15位という結果でした。今年はそれよりも上位を狙うべく挑戦を続けていきたいと思っています。8時間という耐久レースなので、評価ライダーの経験で培った、新たな視点がレースにも生きてくると思います。

レースの経験が実車評価に、実車評価のキャリアがレースに役立つのですね!7月21日、社内応援団も組まれているとのことなので、応援しに行きます!
今年の鈴鹿8耐の様子をご紹介する記事もお楽しみに!
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