しなやかに変形する金属製タイヤ 砂丘の実証フィールドで開発を推進中!
タイヤの基本性能を徹底的に確認し、走破性と耐久性を鍛える

改めて、第2世代のタイヤについて教えてください。

第1世代のタイヤは、砂漠で荷物を悠々と運ぶラクダのふっくらとした足裏から着想を得て、金属製の柔らかいフェルトをタイヤのトレッド部にあたる接地面に配置し、骨格はスプリング構造を採用しました。これにより、月面を覆うレゴリスと呼ばれるきめ細かい砂とタイヤの間の摩擦力を高め、車両の駆動力を路面に伝える走破性を確保していました。

一方、3月に発表した第2世代は、空気充填が不要な「AirFree®」の技術を生かしています。薄い金属製のスポーク構造を採用し、トレッド部を回転方向に分割することで、さらに高いレベルでの走破性と耐久性の両立を目指しています。

第2世代を開発する上で、意識したことを教えてください。

高い走破性を確保するために、接地面積をしっかり稼ぐことを意識しました。そのため、第2世代ではタイヤそのものをしなやかに変形させ、接地面が円形ではなく長方形になるようにしています。そうすることで、タイヤが地面と接する面積が増え、砂に沈み込みにくくなり、走破性が良くなります。

金属でできているのに、しなやかに変形するんですね!その分壊れやすくなることはないんですか?

そうですね。しなやかにタイヤを変形させると、変形する部分が故障の起点になる可能性があります。そのため、走破性と耐久性、両方を担保できるよう最新のシミュレーション技術も活用して特定の部分に負荷が集中しないように設計を進めています。また、スポーク状の構造や、分割されたトレッド、トレッド同士をつなぐリングを採用することで、タイヤとして走行するのに必要な機能を各部品へ分担させることができ、設計がしやすく性能の向上が容易になります。

今日は、その走破性と耐久性を確認するということですね!

そうですね。ここ、鳥取砂丘にある「ルナテラス」と呼ばれる場所は、広大で平らな砂地が確保され、安定した走行試験が可能です。2種類の試験車両を使用して砂上でのタイヤの走破性と耐久性を検証しています。

市販の乗用車によるけん引試験では、砂の上を長距離走り、耐久性能を確認します。もう1台の試験用に開発した車両では、さまざまな荷重の条件で、車両が加減速する際にタイヤにかかる力などを測定し、走破性を検証しています。これらの試験を通して、タイヤのさらなる改良につなげていきます。
さらなる改良に向けて、現物現場で鳥取県や地元企業と連携

「ルナテラス」での試験で得られたデータは、どのように活用するのでしょうか。

まず、試作したタイヤが実際の使用環境で安心・安全に狙い通りの性能を発揮できるか検討するため、シミュレーションの他、小平の技術センターで行う室内試験と、「ルナテラス」で行う砂上走行試験を行っています。これら両方の試験結果を踏まえて、室内試験のデータと実際の走行データの関係性の解明に取り組んでいます。

そうなんですね。「ルナテラス」ならではの大変な面はありますか?

「ルナテラス」は自然環境にあるため、小平での室内試験と異なり、天候の影響を受けます。雨が降ると砂が濡れ、求めている条件でのデータが取れなくなるため、試験自体ができなくなる場合があります。そのため、天候は大事ですね。晴れの日を狙って2、3週間ほど鳥取に滞在することもあります。また、安定した路面条件で試験を行うためには砂の整地が必要で、地元の協力企業の皆様と協力して進めています。

現物を見ながら月面探査車用タイヤの開発を進める上で、「ルナテラス」はとても大切な現場なんですね。本日はありがとうございました!
5月30日、「ルナテラス」でメディア向けに月面探査車用タイヤ第2世代の説明会を鳥取県の平井知事と共に行い、地元のテレビ局に加え、東京からのメディアも多数出席しました。報道映像は、以下よりご覧いただけます。
鳥取砂丘で走行試験 月面探査用タイヤを大手タイヤメーカー・ブリヂストンが開発 説明会に宇宙産業に取り組む鳥取県などが出席(日本海テレビ)
https://news.ntv.co.jp/n/nkt/category/society/nk07e3a7c2c6f54c5ab4c60fb69cafb8f7
月面探査車用 最新モデルのタイヤ公開 鳥取砂丘で走行試験(NHK鳥取 NEWS WEB)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20240530/4040017825.html
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