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豪雨に立ち向かったプロたち―ブリヂストンレディスオープンの舞台裏

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5月21日(木)~24日(日)に開催された、国内有数の女子プロゴルフトーナメント「ブリヂストンレディスオープン」。11年ぶりのアルバトロス※1が生まれるなどハイレベルな争いが繰り広げられる一方、想定外の豪雨によって2日目の競技が中止となる事態となりました。
その舞台裏には、気象・コース・安全管理の情報を束ね、緻密な連携と判断力を発揮するブリヂストンスポーツ(株)の存在がありました。
今回は、その中心にいたブリヂストンスポーツ トーナメント企画部の加賀山さんに、知られざる大会運営の舞台裏を伺いました。

※1 アルバトロスは、規定打数(パー)より3打少なくホールアウトすること。「ホールインワン」よりも確率が低く、国内女子ゴルフツアーでは、2015年「NEC軽井沢72ゴルフ トーナメント」で渡邉 彩香選手が達成して以来、11年ぶり12人目の記録

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ブリヂストンスポーツ(株) トーナメント企画部 トーナメント企画ユニット 課長

加賀山 雅さん

2007年の入社以来、20年間に渡ってトーナメント企画業務を担当。入社2年目からトーナメントディレクターを経験し、その道のプロフェッショナルとして、BSLOPをはじめ数多くの大会運営を支えてきた

国内女子プロゴルフを代表するトーナメント

Arrow編集部 まずブリヂストンレディスオープン(以下、BSLOP)の概要と、トーナメント企画部、そして加賀山さんの役割を教えてください。

加賀山さん BSLOPは、(株)ブリヂストンと中京テレビ放送(株)が主催する、国内女子ツアーを代表するゴルフトーナメントで、予選・決勝とも2日間ずつ、計4日間で行われます。
私たちトーナメント企画部は、ブリヂストン、中京テレビ放送、日本女子プロゴルフ協会(以下、JLPGA)、ゴルフ場、協力会社、ボランティアの皆様と連携しながら大会を運営しています。私はトーナメントディレクターとして、大会の運営を統括しています。

Arrow編集部 準備はどのくらい前から、どのように進められるのですか?

加賀山さん 約1年前から大会準備はスタートします。具体的には約10カ月前の契約締結を皮切りに、半年前からボランティアの募集をしつつ、JRと連携して会場最寄り駅である鎌取駅と東京駅を結ぶ臨時特急列車の手配も行います。他にも会場となるコースの下見や大会サイトの公開など多岐にわたる準備が本格化します。そして1カ月前には出場選手の最終調整や、現場でのシミュレーションを行い、万全の体制で本番を迎えます。

想定外の豪雨。現場に走る緊張

Arrow編集部 私たちも現場にいましたが、2日目は想定外の大雨でしたね。加賀山さんや担当の方が気象レーダーをじっと見つめていたのが印象的でした。

加賀山さん そうですね。大会初日から雨で、厳しいコンディションの中での試合となっていました。また2日目は、雷雲の接近影響もあり、開始時間を遅らせてスタートしましたが、当初予報されていた以上の雨と雷に見舞われた結果、2日目の競技は中止となってしまいました。

中断後、再開されることなく2日目は中止なった

Arrow編集部 開始時間の変更にはどのような意図があったんでしょうか。

加賀山さん 2日目の開催方法については、JLPGAと何度も協議を重ねました。大会は、18ホール×4日間の72ホールのスコアで競い、1・2日目が予選、3・4日目が決勝という設計です。
そのため、「予選最終日となる2日目(18ホール)をどう成立させる」か、天候の回復が見込めずに予選ラウンドが翌日にずれ込むことも予め想定し、何とか3日目の土曜日に54ホールを終えるためのさまざまなシミュレーションを行いました。結果として、まずは2日目の開始を2時間半遅らせても、今日中に18ホールを終えられると判断し、スタート時間を調整したのです。

Arrow編集部 朝の時点ではプレーを開始することができましたが、その後中断の末に「中止」となりましたね。その裏側にはどのような判断があったのでしょうか?

加賀山さん 最終的な裁定はJLPGAの競技委員が行うので、私たちは判断材料を収集・整理して提供する立場にあります。
特に重要な判断材料となる「天候」と「コース状況」は、さまざまな情報源を活用し、メンバーと密に連携しながら収集しています。天候については、専任の気象予報士による分析と予報レーダー、気象庁データを用いて、詳細かつ正確な情報を常時モニタリング。また、コース状況については、コース内に配置した担当者と連携を取り、「浮水」「冠水」の程度を逐次集約していました。

気象データをモニタリングする加賀山さん(左)

当初、雨雲は次第に抜けていく見立てだったので、開始時間を遅らせる判断をしましたが、次々と東京湾側から雨雲が湧き続け、一時は降水量10mm/h、風速6m/sの雨風が吹き荒れる大荒れの天気となりました。
その後も、豪雨・強風・雷も鳴りやまず、コース・バンカーとも水が浮き排水が追い付かないこと復旧(水抜き・整備)のめどが立たない程のコンディションとなったことが決め手となり、「今日中の再開は不可能」というJLPGAの判断の基、中止の決定が下されました。

コース内で状況を注視しているメンバーと連携し、復旧にかかる時間を検討する加賀山さん

Arrow編集部 選手の受け止めはどうだったのでしょうか。

加賀山さん 「この状況では難しい」「まだ続けたい」など、選手によってさまざまな意見がありましたが、選手の安全やプレー環境の公平性の観点からも、必要な判断だったと感じています。

想定外の事態を、「想定通り」に対処する

Arrow編集部 中止は選手だけでなく、お客様や翌日以降の運営にも影響があったと思いますが、どのような対応をさたんですか?

加賀山さん まずは選手、お客様への対応を急ぐ必要があります。選手にはJLPGAを通じて中止理由と翌日のスケジュールを一斉通知。お客様には安全に退場いただけるよう場内アナウンスを通じて導線を整備しながら、チケットの取り扱いについてもご案内しました。また、せっかく来ていただいたお客様に少しでも良い思い出を持ち帰ってもらおうと、急遽ブリヂストンスポーツ契約選手によるサイン会を実施しました。お客様には思いがけないサプライズということもあって、喜んでいただけました。
そして、大会運営として欠かせないのは、翌日以降の準備です。中止によって予選が翌日にずれ込んだことで、本来なら予選を通過した60位タイまでの選手がプレーするはずだった3日目の運営を、全120名がプレーする運営へ切り替える必要がありました。これに伴い、選手や関係者の駐車・輸送計画、ボランティア配置、観客導線、放送のカメラ位置や中継対象組など、大会のオペレーションを急ピッチで再設計しました。

Arrow編集部 加賀山さんは20年に渡って大会運営業務を担っていますが、情報収集や状況判断の難しさはあったでしょうか。

加賀山さん 当初、大荒れの天気予報だった初日が無事だっただけに、「2日目ももう少し待てばプレーできるのでは」という揺らぎはありました。ですが、コースコンディションの復旧が不可能という客観的な情報が揃った瞬間に腹を決める。そのための材料を集め切ることに集中しました。

Arrow編集部 せわしなく状況が変わるなかで、冷静な判断を可能にした要因は何でしょうか。

加賀山さん 平常時の「標準オペレーション」の土台があるからこそだと思っています。大会期間中は、スタート2時間前に現地に入り、ギャラリーの受け入れやイベント対応、競技終了後は翌日の準備など、分単位で行動しなければなりません。
これらを全て確実に遂行するには、徹底された標準オペレーションと、関係各所との密接な連携が不可欠です。今回のような有事でも、指揮系統の確立とオペレーションの再設計を迅速に行うことができたのは、この土台があるからこそ。落ち着いて対応できたと思っていますが、主催大会ゆえ、いつも以上に責任を感じていました。それでも20年間の現場経験や、司令塔として自ら抱え込まずに自身の役割を徹底し、協力会社やボランティアスタッフ含めて、全員の力を結集できたことで、今大会も無事に終えることができたと思っています。
今大会の経験を活かして、チームとしての再現性を高めながら、どの大会でも安定した品質の大会運営ができるよう、これからこの舞台を支えていきます!

Arrow編集部 まさに、トーナメントを支えるプロフェッショナルですね!これからも加賀山さんの挑戦を応援しています!

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