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まさに“縁の下の力持ち” 文化財を守るブリヂストンの免震ゴムに注目!

2022年10月1日。東京都千代田区の日本武道館のすぐそばに、「九段会館テラス」がオープンしました。登録有形文化財にも登録されていた旧九段会館の文化財としての価値を守りつつ、最新のテクノロジーを各所に取り入れた、次世代型のオフィス複合施設です。建物の基盤部分にはブリヂストンの免震ゴムが使われており、地震から建物を守る重要な役割を果たしています。
今回は「九段会館テラス」プロジェクトを主導した東急不動産株式会社と鹿島建設株式会社の責任者の方々にもご登場いただき、ブリヂストンの免震ゴムについて深掘りします!
登録有形文化財「旧九段会館」

1934年(昭和9年)、「軍人会館」として竣工。1936年には「二・二六事件」の鎮圧にあたる「戒厳司令部」が置かれるなど、昭和史の舞台として重要な役割を担った。戦後は結婚式場や貸しホール、コンサート会場などとして親しまれてきたが、2011年の東日本大震災の際に大ホールの天井が崩落し、大きな被害を受け休館。その後、土地と建物が国に返還された。本プロジェクトで生まれ変わり、新たにオフィス複合型の新施設としてオープンした。
旧九段会館

手前が保存した旧九段会館の入り口。奥は新築した17階建てのオフィスエリアになっている。

営業担当として「九段会館テラス」プロジェクトに携わった石田さんに、免震ゴムについてお聞きしました。
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ブリヂストン化工品ジャパン(株)
免制震東日本営業部
免制震東日本営業1課

石田 有花さん

——免震ゴムとはどのような装置なのでしょうか?

石田さん 免震ゴムとは、薄いゴムと鋼板を交互に積層してつくられた免震装置の一つです。上下(鉛直)方向には建物を支える機能を、水平方向は地震の揺れを吸収する機能を発揮します。免震ゴムを建物の基礎部と上部構造の間に設置することで地震発生時の建物へのダメージを低減し、また家具などの転倒・破損を抑え建物の中にいる人を守ることができます。
免震構造

(注釈)一般的な耐震構造と免震構造の違い

(注釈)免震ゴムと免震ゴムの断面構造(薄いゴムと鋼板を交互に積層されている)


——日本は地震が多いので、対策は欠かせませんね。中でもブリヂストンの免震ゴムはどのような強みがあるのでしょうか?

石田さん ブリヂストンの免震ゴム事業は30年以上の歴史を持っていて、商品ラインナップは業界随一。免震ゴムのパイオニアとして納入実績も豊富です。例えば、東京駅の丸の内駅舎や日本橋三越本店、国立西洋美術館、そしてブリヂストンの創業者石橋正二郎氏が収集した美術品を展示しているアーティゾン美術館が入るミュージアムタワー京橋にも使用されています。建物の基礎部分に設置されているので直接見ることはできませんが、ブリヂストンの技術が日本各地の建物を足元から支えているんですよ。


詳しくは、5月に公開予定の「地震から文化的建造物や人々の暮らしを守るブリヂストンの免震ゴムの技術と生産現場」をご覧ください!
ここからは、「九段会館テラス」が生まれ変わるまでの道のりを、
プロジェクトを主導した東急不動産(株)と鹿島建設(株)の責任者の方々にお聞きします。
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東急不動産(株)
都市事業ユニット 開発企画本部
開発第一部 事業企画グループ
課長補佐

伊藤 悠太さん

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鹿島建設(株)
(仮称)九段南一丁目プロジェクト
工事事務所
所長

神山 良知さん

——今回のプロジェクトはどういったコンセプトで進められたのですか?

伊藤さん 旧九段会館は、大正末期から昭和初期にかけて公共機関の庁舎などに用いられていた「帝冠様式」(鉄筋コンクリート造りの洋風建築に、和風の屋根を架けたデザイン)で建てられた建造物です。今回のプロジェクトでは「水辺に咲くレトロモダン」をコンセプトに、外観だけを見栄え良く残すのではなく、建物内部に施された装飾や内装の雰囲気まで可能な限り保存・復元することで、歴史と未来を感じさせる施設を目指しました。

神山さん 実は、プロジェクトの過程でたくさんの「発見」があったんです。例えば応接室として使われていたゲストルーム「葵」の壁は、工事を請け負った時にはペンキで白く塗られていました。しかし解体を始めたところ、なんとペンキの下に金色の絹糸でジャガード織されたクロスが埋め込まれていたんです。これは東大寺(奈良県)の正倉院宝物殿にある銀壺と似た模様で、国の報告書にも記載がない大変貴重なものでした。そこで、ペンキを上塗りする計画を急遽変更し、一枚一枚塗料を落としてクロスとして復元することにしました。
神山さん そのまま使えるものはできるだけ残し、足りないものは職人が工夫を重ね、高い再現度で作りあげています。外壁のスクラッチタイルはその良い例です。 また、ゲストルーム「雅」やバンケットホール「鳳凰」の天井に施されていた漆喰(しっくい)の立体的な櫛目模様を残すにあたっては、専用の工具を新たに作り出すところから始めました。

——専用の工具から作られたのですね! こだわりを感じます。

神山さん どこをとっても唯一無二のものですから、妥協はしませんでした。創建当時の報道写真や絵ハガキを集めて当時の様子を調べたり、同じ帝冠様式で作られている愛知県の名古屋市庁舎を見学したりもしましたね。

伊藤さん 創建当時の建物の良さを残しつつ、国内のオフィスビルとしては初めてスマートガラス「View Smart Glass」を導入したほか、最新の設備も数多く導入しています。ブリヂストンさんの免震ゴムもその一つ。現場設置前には神山所長と一緒に横浜工場にお伺いして、免震ゴムが誕生する現場や検査の様子などを拝見しました。実績や製品試験の体制も十分でしたし、何よりブリヂストンさんの安全意識や技術の高さを感じました。「信頼できる」と感じ、ブリヂストンさんの免震ゴムを導入して良かったと思いました。

神山さん 免震装置を製作する会社さんは他にも知っていますが、初期の段階でブリヂストンさんの免震ゴムに決めましたね。工場でのつくり込みの姿勢や、鹿島建設の設計者の信頼している様子を踏まえて総合的に判断しました。過去の物件の経験からブリヂストンの担当の方のコストに関する緻密な説明や分かりやすい仕様書も期待していましたし、実際そうでした。免震ゴムは、地震の揺れによる建物の上下階の床と床との変位差(層間変位)を押さえ、膨大な手間をかけて保存・復原したこの建物の耐久性向上に絶大な威力を発揮してくれています。

※ 建物屋上に設置したセンサーとAIを利用し、太陽の位置や天候に合わせてガラスの透過率を4段階で自動調整し、室内に差し込む自然光・熱量を最適化できる窓ガラス
伊藤さん

プロジェクト期間中はほぼ毎日現場に足を運んだという伊藤さん。「職人さんたちから『この装飾は残したい!』と直談判されたことも。プロジェクトを通して人の情熱に触れました」。

——既にある建物に対して、どのように免震ゴムを設置していくのですか?

神山さん 今回、保存部分にあるすべての柱の地下1階部分に、高度な技術を要する免震工事を施しました。免震ゴムを設置するために用いたのは、「免震レトロフィット工法」と呼ばれる専門工法です。

設置の流れ

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各柱に仮設の柱と油圧ジャッキを利用したシステムを組みます。柱ごとに算出した荷重を油圧ジャッキに慎重に掛けながら、柱を切断しても問題ないように柱周辺の荷重を受け替えて支えます。

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柱を切断して免震ゴムを挿入するスペースをつくります。旧九段会館の柱はコンクリートでできており、その中に鉄骨と鉄筋が組まれていました。他の柱に響かないよう保護しながら慎重に切り取ります。

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空いたスペースに免震ゴムを設置。ゆっくりと油圧ジャッキの荷重を抜き、仮設柱にかかる荷重を免震ゴムに移し替えます。

神山さん 柱を支えている間は、建物が傾いたり、柱や梁に歪みが生じたりしないように保たなければなりません。これが「免震レトロフィット工法」の一番の難しさです。柱と柱の間の傾きは2000分の1、つまり約2㎜以下に抑えることが必須条件でした。免震ゴムの設置は一斉に行うのではなく、建物を5つのエリアに分けて施工中の建物の耐震性能を維持しながら、少しずつ作業を進めました。
神山さん

「建物を仮の部材で支えていた約1年間は、台風や地震、強風や大雪などに敏感になって、眠れない日が続きました」と神山さん。

——約3年も建物を持ち上げていたことに驚きました。

石田さん 今回は、建物を支えながら、地震の揺れを吸収し建物を元の位置に戻す機能をもつ「鉛プラグ挿入型積層ゴム」と、同じく建物を支えながら地震時に滑ることで揺れを受け流す「弾性すべり支承」という、2種類の免震装置を採用いただきました。新築物件に免震ゴムを納入する場合、大規模施設でもかかる期間は3ヶ月ほどです。しかし今回は既存の建物に、細心の注意を払って設置を進めるということで、通常の倍以上、約8ヶ月の時間をかけて計85基の免震ゴムを納入しました。
気を付けなければならなかったのは、搬入するタイミングです。建物のつくりがとても複雑であることに加え、工事の進捗は日々変わっていきます。工事の段取りと搬入のタイミングを見誤ると搬入経路が閉ざされ、工事全体の進捗を妨げることになってしまいます。搬入を担う業者の方と事前に下見を重ね、搬入手順は工事の現場担当の方に丁寧に確認し、無事最適なタイミングで搬入することができました。横浜工場の皆さんに、納入スケジュールを調整していただいたことにもとても感謝しています。
石田さん

2020年に入社後、初めての担当が本プロジェクトとなった石田さん。「受注までのやり取りや免震ゴムの種類の選定を担った多くの先輩方からこのプロジェクトを引き継ぎ、ようやく完遂できたことに達成感と感謝を感じています」

伊藤さん 工事の進捗に応じてきめ細やかに対応いただけたことはとてもありがたかったですね。

石田さん ちなみに免震ゴムには一台一台シリアル番号がついています。事前検査で確認された一台一台の製品高さの微細な差と建物の傾きや柱や梁などの歪みレベルとの相性を元に、どの柱にどの免震ゴムを設置するのかを施工段階で設計者様に細かくご指定いただいたんです。0.1㎜単位の差が安心・安全につながるのだと実感することができました。

——最後に、今後の展望や「九段会館テラス」に期待することをお聞かせください。

神山さん 現代、ものを捨てる、壊すことはとても簡単です。しかし、旧九段会館には長い歴史と誇るべき日本の技術、そして職人たちの “魂”が宿っていました。建物としての機能はもちろんのこと、歴史や文化的な価値、思いまで後世に伝えることは、一時代を生きる者にとって使命感に似たものを感じています。
また、正面玄関前の芝生エリア「九段ひろば」や、保存部分の屋上に設けたルーフトップガーデン、お濠沿いのテラスなど、都会の中で自然を感じられるところもこの施設の魅力です。ぜひ多くの方に立ち寄っていただき、憩いの場としていただければうれしいですね。

伊藤さん 実は、国と取り交わしている土地の契約(定期借地権)では、「九段会館テラスがある敷地内を今から70年後に更地にして返す」ということになっているんです。たくさんの方にご利用いただき、施設の価値を実感していただくことで、70年後『今後も残すべきだ』と判断いただけるのではないかと期待しています。

石田さん 今回の工事では将来的に取り替えができる工法で設置していただきました。たくさんの企業、職人が一丸となって建て直した「九段会館テラス」を、ブリヂストンの免震ゴムで末長く支えていけたらと思います!
編集後記
ブリヂストンの免震ゴムは人々の安心・安全な暮らしを支えるとともに、将来にかけて古き良き文化の継承に貢献していることを実感しました。地震大国とも呼ばれる日本。今後もブリヂストンの免震ゴムの活躍に期待しましょう!
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