AIとBCMA 2つのアプローチによるサプライチェーンの全体最適

冬タイヤ商戦は短期決戦。需要と供給のバランスが一つ狂えば、販売機会を逃してしまいます。2021年に上市されたブリヂストンのプレミアムスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3」の販売計画に、「需要予測AI」と「BCMA」という2つの新しいアプローチを取り入れることで、売り逃しを減らし、多くのお客様に製品の”価値”をお届けすることができました。
今回は、BGA2022の受賞テーマである「冬タイヤ『需要予測AI』・『断トツ商品VRX3上市とBCMA活用』による販売最大化」の案件をピックアップ。取り組みに携わった皆さんにお話を伺いました!
今回は、BGA2022の受賞テーマである「冬タイヤ『需要予測AI』・『断トツ商品VRX3上市とBCMA活用』による販売最大化」の案件をピックアップ。取り組みに携わった皆さんにお話を伺いました!
BCMAを採用することで生産を効率化、需要に素早く対応
――本プロジェクトに皆さんはどのように関わってこられたのでしょうか?
大城 製品企画部門のチーフエンジニアとして商品企画部門と一緒に顧客価値が何かを議論し、製品に価値を織り込むための開発目標設定、実現可能な開発シナリオ作りを担当しています。製品企画から量産化までフォロー、上市前後の販売訴求まで幅広く関わっています。本プロジェクトの目玉は、北海道・北東北主要5都市での装着率が20年連続No.1であり、さまざまな運転シーンにおいて"安心・安全"を足元から支えるブリザック、そして氷上性能120%到達という開発難易度の高い断トツプレミアム商品であるVRX3にBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)を初導入したことです。異なる商品間でモジュールを共用することによって生産効率化を実現しました。実行にあたってはBCMA適用に向けた課題設定から課題解決、実際の製品の量産立ち上げまでを現場の皆様と一緒に進めてきました。
後藤 私は当時、BSJPの物流改革を推進する部署で、スノータイヤの物流改革を担当していました。加えて、他社との共創を図るプロジェクトの一環として、三菱商事(株)(以下、三菱商事)との連携の可能性を検討していました。同社の子会社で、AIの需要予測に強みを持つエムシーデジタル(株)(以下、エムシーデジタル)と我々の需給調整の課題感について議論し、AI予測を導入したオペレーションの変革を図ってきました。
菊森 国内のリプレイスタイヤ事業を担当する部門で、お客様のニーズに合わせた商品企画、販売促進までマーケティング全般を幅広く担当しています。本プロジェクトは私の前任の方が中心で進められてきたものですが、私もマーケティングに携わっていました。
大城 製品企画部門のチーフエンジニアとして商品企画部門と一緒に顧客価値が何かを議論し、製品に価値を織り込むための開発目標設定、実現可能な開発シナリオ作りを担当しています。製品企画から量産化までフォロー、上市前後の販売訴求まで幅広く関わっています。本プロジェクトの目玉は、北海道・北東北主要5都市での装着率が20年連続No.1であり、さまざまな運転シーンにおいて"安心・安全"を足元から支えるブリザック、そして氷上性能120%到達という開発難易度の高い断トツプレミアム商品であるVRX3にBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)を初導入したことです。異なる商品間でモジュールを共用することによって生産効率化を実現しました。実行にあたってはBCMA適用に向けた課題設定から課題解決、実際の製品の量産立ち上げまでを現場の皆様と一緒に進めてきました。
後藤 私は当時、BSJPの物流改革を推進する部署で、スノータイヤの物流改革を担当していました。加えて、他社との共創を図るプロジェクトの一環として、三菱商事(株)(以下、三菱商事)との連携の可能性を検討していました。同社の子会社で、AIの需要予測に強みを持つエムシーデジタル(株)(以下、エムシーデジタル)と我々の需給調整の課題感について議論し、AI予測を導入したオペレーションの変革を図ってきました。
菊森 国内のリプレイスタイヤ事業を担当する部門で、お客様のニーズに合わせた商品企画、販売促進までマーケティング全般を幅広く担当しています。本プロジェクトは私の前任の方が中心で進められてきたものですが、私もマーケティングに携わっていました。
――挑戦の背景について教えてください。
菊森 短期決戦である冬タイヤ商戦では、適切なタイミングで商品をお届けすることが非常に重要で、需要と供給のギャップについてはこれまでも課題になっていました。その上で、ブリヂストンの最重要商品の一つであるBLIZZAK VRX3の上市に当たり、市場ポジションを絶対的なものにするという大きな目標。さまざまなアプローチが検討され、需要予測AIとBCMAについてもそれぞれ検討を始めていました。
菊森 短期決戦である冬タイヤ商戦では、適切なタイミングで商品をお届けすることが非常に重要で、需要と供給のギャップについてはこれまでも課題になっていました。その上で、ブリヂストンの最重要商品の一つであるBLIZZAK VRX3の上市に当たり、市場ポジションを絶対的なものにするという大きな目標。さまざまなアプローチが検討され、需要予測AIとBCMAについてもそれぞれ検討を始めていました。
大城 BCMAは、商品間で共有するモジュールと、性能をカスタマイズするモジュールを組み合わせてタイヤを開発・生産していく新しい「モノづくり基盤技術」です。シンプル、効率化により開発・生産コストダウンすると共に、開発スピード・効率UPを狙っています。当初、BCMA適用の頭出しの商品として別の商品が計画されていたのですが、コロナ禍で上市のスケジュールが変更になり、既に開発が始まっていたBLIZZAK VRX3に白羽の矢が立ちました。菊森さんが触れた通り、冬タイヤ戦略における売り逃しが課題である認識は共有されていましたので、その解決にBCMAが最適な手段になると思い、VRX3とVRX2のBCMA適用に挑戦しました。冬タイヤをお求め頂くお客様にタイムリーに必要な量のタイヤを供給できること、つまりは売り逃しの削減です。
新商品であるVRX3に加え、2017年から販売しているVRX2を需要に合わせてどう製造し、供給していくか、急ピッチで検証を進めました。BCMAによって、VRX3とVRX2を共用のモジュールを用いた設計にすることでフレキシブルな生産を実現し、生産リードタイムを短縮することでタイムリーに商品をお届けすることが出来るようになりました。
新商品であるVRX3に加え、2017年から販売しているVRX2を需要に合わせてどう製造し、供給していくか、急ピッチで検証を進めました。BCMAによって、VRX3とVRX2を共用のモジュールを用いた設計にすることでフレキシブルな生産を実現し、生産リードタイムを短縮することでタイムリーに商品をお届けすることが出来るようになりました。
菊森 VRX3は、氷上性能が2世代分進化したプレミアムスタッドレスタイヤ。初めての実戦投入となるBCMAコンセプトを活用し、高性能タイヤを量産するという困難なチャレンジでした。バリューチェーン全体が目標を共有し、協業したからこその成果です。
社外との”共創”でより精度の高い予測が可能に
――需要予測AIについてはいかがでしたか?
後藤 三菱商事、エムシーデジタルと連携の可能性を議論するなかで、冬タイヤの需給の課題があることを伝えたところ、先方が持っている「食品業界での需要予測ノウハウ」が使えるかもしれないという提案をいただきました。タイヤも食品も、季節によって売れる商品が変わるという共通点があるため、VRX3の需給予測を先方の知見を活かしてサポートできないか検討することに。単に在庫を増やすなど、サプライチェーンへの負担を増やすことなく、お客様が欲しい時に欲しい商品を届けていくためには、需要予測の精度をいかに高めていくかが重要です。ブリヂストンからは、需要予測に必要なデータを彼らに提供しました。過去の販売実績はもちろん、降雪のタイミングとの相関や、各販売エリアにおける動向、さらに自動車メーカーの新車生産計画など、さまざまな情報を各部門にヒアリングしてデータを集めました。
そうした”共創”によって完成したAIを、実際の過年度データに当てはめてシミュレーションしたところ、AIによる予測値と実際の需要結果に高い相関が確認できたので、実戦のオペレーションでも活用できると判断し、導入へ踏み切りました。
大城 From Toの数字を見せていただきましたが、予測精度が飛躍的に向上しているのに驚きました。また、2021年度は冬タイヤ全体の販売目標はクリアできましたが、BCMAとAIの両方を進めたことで、販売機会の損失を減らし、多くのお客様にBLIZZAKの価値をお届けすることにつながったと考えています。
後藤 三菱商事、エムシーデジタルと連携の可能性を議論するなかで、冬タイヤの需給の課題があることを伝えたところ、先方が持っている「食品業界での需要予測ノウハウ」が使えるかもしれないという提案をいただきました。タイヤも食品も、季節によって売れる商品が変わるという共通点があるため、VRX3の需給予測を先方の知見を活かしてサポートできないか検討することに。単に在庫を増やすなど、サプライチェーンへの負担を増やすことなく、お客様が欲しい時に欲しい商品を届けていくためには、需要予測の精度をいかに高めていくかが重要です。ブリヂストンからは、需要予測に必要なデータを彼らに提供しました。過去の販売実績はもちろん、降雪のタイミングとの相関や、各販売エリアにおける動向、さらに自動車メーカーの新車生産計画など、さまざまな情報を各部門にヒアリングしてデータを集めました。
そうした”共創”によって完成したAIを、実際の過年度データに当てはめてシミュレーションしたところ、AIによる予測値と実際の需要結果に高い相関が確認できたので、実戦のオペレーションでも活用できると判断し、導入へ踏み切りました。
大城 From Toの数字を見せていただきましたが、予測精度が飛躍的に向上しているのに驚きました。また、2021年度は冬タイヤ全体の販売目標はクリアできましたが、BCMAとAIの両方を進めたことで、販売機会の損失を減らし、多くのお客様にBLIZZAKの価値をお届けすることにつながったと考えています。
菊森 BLIZZAKのメディア露出を積極的に実施し、TCの皆様にもご協力いただきセールスの方を対象とした商品・販売セミナーを実施するなど、ブランド戦略と販売戦略、双方をこれまで以上に強化して取り組んだことも結果につながり、シーズンの販売シェアも過去最高レベルを達成できました。
いくら素晴らしい商品でも、在庫がなければ意味がありません。寒冷地のお客様にとって、冬タイヤは生活や仕事を支えるライフライン。必要な時に必要なタイヤをご購入いただけるよう、商品を準備しておくことは、私たちが果たすべき責任と言えます。
大城 2021年は早くから降雪があり、需要が大きく伸びたシーズンでした。我々としては、プレミアム商品であるVRX3を多く生産する計画でしたが、お客様からのVRX2へのニーズも大きく、在庫が足りなくなる状況に。そこでBCMA生産を活用し、VRX3からVRX2にスムーズに生産を振り替えることで、臨機応変に需要の変化に対応することができました。
後藤 店舗への実販の状況をデータとしてAIに読ませることで、市場が今、何を求めているかをより明確に把握できるようになりましたね。
いくら素晴らしい商品でも、在庫がなければ意味がありません。寒冷地のお客様にとって、冬タイヤは生活や仕事を支えるライフライン。必要な時に必要なタイヤをご購入いただけるよう、商品を準備しておくことは、私たちが果たすべき責任と言えます。
大城 2021年は早くから降雪があり、需要が大きく伸びたシーズンでした。我々としては、プレミアム商品であるVRX3を多く生産する計画でしたが、お客様からのVRX2へのニーズも大きく、在庫が足りなくなる状況に。そこでBCMA生産を活用し、VRX3からVRX2にスムーズに生産を振り替えることで、臨機応変に需要の変化に対応することができました。
後藤 店舗への実販の状況をデータとしてAIに読ませることで、市場が今、何を求めているかをより明確に把握できるようになりましたね。
取り組みを通じて生まれた3つの「E」
――今回、BGA2022の受賞テーマに選ばれましたが、どんなところが評価されたと思いますか?
菊森 BCMAと需要予測AI、それぞれで大きな成果を挙げることができました。中でもBCMAの初導入案件として、バリューチェーン全体で協力して取り組み、販売の最大化につなげることができたことだと思います。
後藤 そうですね。異なる部門がそれぞれの立場と持ち場で課題を乗り越えるべく検討を続けてきましたが、全体として一つの目標に向かっていく一体感を感じられる取り組みだったと思います。
大城 お客様に商品をお届けするまでのプロセス全体できちんと価値を創ることができたことが大きかったと感じています。各部門がそれぞれの業務を縦割りで進めているところに、BCMAという横串が通り、バリューチェーンに関わる部門の皆さんが、その効果を最大化するために、今回の大きな変化に応えてくださったことに感謝しています。
菊森 BCMAと需要予測AI、それぞれで大きな成果を挙げることができました。中でもBCMAの初導入案件として、バリューチェーン全体で協力して取り組み、販売の最大化につなげることができたことだと思います。
後藤 そうですね。異なる部門がそれぞれの立場と持ち場で課題を乗り越えるべく検討を続けてきましたが、全体として一つの目標に向かっていく一体感を感じられる取り組みだったと思います。
大城 お客様に商品をお届けするまでのプロセス全体できちんと価値を創ることができたことが大きかったと感じています。各部門がそれぞれの業務を縦割りで進めているところに、BCMAという横串が通り、バリューチェーンに関わる部門の皆さんが、その効果を最大化するために、今回の大きな変化に応えてくださったことに感謝しています。
――Bridgestone E8 Commitmentのどの「E」に貢献できたと思いますか?
大城 一番は「Ease」ですよね。BLIZZAKの対外向け資料で必ず冒頭にお話ししているのが、「タイヤは生命を乗せている」というメッセージです。タイヤをつくっている従業員みんながこの想いをこめて仕事をしています。更なる「安心・安全」を追求していきたいです。
後藤 BCMAの導入や需要予測AIの活用によって、消費地により近い工場で作ることも可能になりました。お客様への供給責任を果たしながら、「Ecology」、環境負荷低減にも貢献していると感じます。
菊森 私は「Efficiency」を強調したいです。タイヤがあってはじめてお客様に価値を提供できます。オペレーションを効率化して、販売計画の急な変更にも皆さんに素早く対応いただいたことで、販売の最大化を実現できました。更に、在庫の適正化にも大きな効果があった取り組みだったと感じています。
大城・後藤・菊森 最後は「Empowerment」ですか。BLIZZAKを通じてみんなで同じ方向に向かって大きな仕事ができて、モチベーションはあがりましたね。
大城 一番は「Ease」ですよね。BLIZZAKの対外向け資料で必ず冒頭にお話ししているのが、「タイヤは生命を乗せている」というメッセージです。タイヤをつくっている従業員みんながこの想いをこめて仕事をしています。更なる「安心・安全」を追求していきたいです。
後藤 BCMAの導入や需要予測AIの活用によって、消費地により近い工場で作ることも可能になりました。お客様への供給責任を果たしながら、「Ecology」、環境負荷低減にも貢献していると感じます。
菊森 私は「Efficiency」を強調したいです。タイヤがあってはじめてお客様に価値を提供できます。オペレーションを効率化して、販売計画の急な変更にも皆さんに素早く対応いただいたことで、販売の最大化を実現できました。更に、在庫の適正化にも大きな効果があった取り組みだったと感じています。
大城・後藤・菊森 最後は「Empowerment」ですか。BLIZZAKを通じてみんなで同じ方向に向かって大きな仕事ができて、モチベーションはあがりましたね。
――今年も冬タイヤ商戦が始まっています。最後に今後の意気込みをお聞かせください。
後藤 需要予測AIについては引き続き、各販売エリアでの最適な在庫配置を目指す挑戦を続けています。私は5月に別の部署へ異動したので、後任に託す形になりましたが、在庫最適化に向けてAIを使いこなしていくための部門のチャレンジは続いていきます。
大城 昨年は、小型・中型のSUV向けVRX3を発売しました。今年は大型のSUV向け商品をお客様にお届けしていきます。また、今年上市したNEWNOやW989など、BCMAによる次の商品開発も進められています。VRX2、VRX3で培ったノウハウを活かし、成功事例を数多く積み重ねて、BCMAの浸透・確立を図っていくことが重要だと考えています。
菊森 需要が伸びているSUVへの展開は大きな挑戦ですね。SUVユーザーにも、凍結した道を安心・安全に走ることができる、プレミアムスタッドレスタイヤの価値をしっかり届けていきたいです。
後藤 需要予測AIについては引き続き、各販売エリアでの最適な在庫配置を目指す挑戦を続けています。私は5月に別の部署へ異動したので、後任に託す形になりましたが、在庫最適化に向けてAIを使いこなしていくための部門のチャレンジは続いていきます。
大城 昨年は、小型・中型のSUV向けVRX3を発売しました。今年は大型のSUV向け商品をお客様にお届けしていきます。また、今年上市したNEWNOやW989など、BCMAによる次の商品開発も進められています。VRX2、VRX3で培ったノウハウを活かし、成功事例を数多く積み重ねて、BCMAの浸透・確立を図っていくことが重要だと考えています。
菊森 需要が伸びているSUVへの展開は大きな挑戦ですね。SUVユーザーにも、凍結した道を安心・安全に走ることができる、プレミアムスタッドレスタイヤの価値をしっかり届けていきたいです。
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