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カーボンニュートラルの実現を目指す旭カーボンの挑戦

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ブリヂストンのグループ会社として、タイヤなどの製造に欠かせない原材料、カーボンブラック(以下、CB)を開発・製造・販売している旭カーボン(株)(以下、ACA)。今回はカーボンニュートラルを目指して日々の業務に取り組む戸井田さんにお話を伺いました。

※ 事業活動や製品において、そのライフサイクル全体で見たときに、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になること。
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旭カーボン(株)
研究開発部 カーボンニュートラル企画推進課
戸井田 圭輔 さん

カーボンニュートラルの実現を目指す組織で取り組みを推進

Arrow編集部 戸井田さんの担当業務を教えてください。

戸井田さん 私が所属するカーボンニュートラル企画推進課は、この名の示すとおり、カーボンニュートラルを推進するために作られた組織になります。私はその実現に向け、CB製造時に排出されるCO2を、さまざまなアプローチから削減することに取り組んでいます。

Arrow編集部 そもそもCBはどのように製造されるのでしょうか?

戸井田さん 簡単に申し上げると、高温のガスを作り、そこに原材料となる油を噴霧し不完全燃焼させることでCBは作られます。ただ、製造方法の特性上、どうしても製造過程で多くのCO2が排出されてしまいます。これまでもCB生成における収率の改善や、排出されたCO2を近隣企業に売却し、化学反応により炭酸カルシウムを生成後、製紙工場にご利用いただくことで、結果的にCO2排出量を抑える取り組みなどを行ってきました。ただ、カーボンニュートラルを目指す上ではこれ以外にもさまざまなアプローチが必要です。

カーボンブラックの製造工程(旭カーボン(株)ホームページより引用。Arrow掲載用に一部編集)

原材料と製造方法、さまざまなアプローチで検討

Arrow編集部 CO2排出量削減に向けた具体的なアプローチについて教えてください。

戸井田さん はい。1つ目は原材料面でのアプローチです。通常のCB製造ではいわゆる化石燃料である重油などを用いますが、この原材料の一部に、例えば植物由来の油を用いることで、カーボンニュートラルに貢献することができます。植物は成長する過程で光合成を行い、空気中のCO2を吸収しているため、製造時に排出されるCO2はプラスマイナスでゼロと考えることができます。

Arrow編集部 まさにカーボンニュートラルに直結するアプローチですね。

戸井田さん ただ、化石燃料と比べると難しい面もあります。CBは炭素で構成されているのですが、炭素成分の多い通常の重油などと異なり、植物由来の油は炭素の構成比が低く、最終的なCBの収率に影響してしまいます。また、植物由来の油を使用することでコストも上がってしまうので、これも大きなハードルですね。

戸井田さん

Arrow編集部 原材料を置き換えることは決して簡単ではないんですね…。他のアプローチはありますか?

戸井田さん もう1つが製造面でのアプローチです。同じ量の原材料を用いる場合でも、CBの収率を上げられれば、CO2排出量を抑えながら、より多くの製品を作ることが可能です。先程申し上げたとおり、原材料となる油を不完全燃焼させることでCBが作られますが、この油の噴霧方法を工夫するなど最適な製造条件を突き詰めることで、CBの品質を損なわずに、収率をさらに上げていく開発に長年継続して取り組んでいます。

生成炉内のイメージ図(旭カーボン(株)ホームページより引用)
戸井田さん達はCBの収率アップを目指し、原料油ノズルの形状改良といった検討を進めている

Arrow編集部 原材料と製造方法、双方の面からカーボンニュートラルを目指して業務に取り組んでいるんですね。

戸井田さん そうですね。また、これまでお話した方向性とは異なる、別のアプローチも検討中です。残念ながら機密の観点からこの場ではお話できないのですが……。

Arrow編集部 とても気になるお話ですが、機密情報ならしょうがないですね。それにしても、さまざまなアプローチでカーボンニュートラルに取り組まれていますが、もともと戸井田さんご自身はサステナビリティに興味があったんですか?

戸井田さん はい。大学で自然環境科学を専攻し、環境問題に関係する分野を学んでいました。もう十数年前になりますが、当時から地球温暖化といった環境問題は懸念されていましたので、自分が勉強していることは将来必ず役に立つと思っていました。その後、ACAに入社し、8年程前から今のような業務に携わるようになり、自分の学生の頃の思いにもマッチした仕事を任されていると感じています。

他事業所の活動も大きな刺激に

Arrow編集部 ところで、日本セグメントでは昨年から、従業員一人ひとりがサステナビリティへの理解を深め、さらなる意識向上につなげることを目的とした「サステナビリティデイ」が開催されています。戸井田さんもこちらには参加されましたか?

戸井田さん はい。サステナビリティデイ当日の講演やディスカッションももちろん拝聴しましたし、今年はこれに加えて、他事業所を見学する企画がありました。いくつか見学先の候補はあったのですが、ブリヂストンBRM(株)(以下、BRM)の加須工場へ訪問させていただきました。まさにサステナビリティに直結する、リトレッドビジネスそのものにも興味がありましたし、他にも精力的な活動をたくさん実施されていることで有名ですので、ぜひ現場を拝見したいと思いました。

Arrow編集部 実際に参加された印象を教えてください。

戸井田さん まずは、ゲストに対する熱烈な歓迎に大変驚かされました。お客様をおもてなしするBRMの姿勢については事前にお伺いしていたのですが、想像以上でしたね。サステナビリティの面では、製造工程で発生する、通常では廃棄されるようなゴムも、何らかの形で全てリサイクルに活用されていることに感心しました。まさに、ゼロエミッションを体現している職場でしたね。また、従業員一人ひとりがサステナビリティに参画している様子も印象的で、SDGsについて、定期的に自分たちが取り組んできたことへの振り返りを行っていました。まさに全員参加でサステナビリティに取り組んでいるんだなと。勉強にもなりましたし、たくさんの刺激を受けることができました。

ブリヂストンBRM(株)の見学会に参加した戸井田さん(後列左から2番目)

カーボンブラック業界のサステナビリティ推進をリードしたい

Arrow編集部 最後に、今後の意気込みや、Arrow読者の方に伝えたいことがあればお願いいたします。

戸井田さん これからの時代は、サステナビリティへの取り組みが会社の価値を左右します。カーボンニュートラルの実現に向け、まだまだやるべきことは多く、それぞれのハードルも高いですが、自分たちが今取り組んでいることが、将来にもつながっていきます。これからもやりがいを感じながら仕事に取り組んでいきたいと思います。また、ACAの技術力や、商品であるCBの品質の高さには絶対的な自信があります。自分達がCB業界のサステナビリティ推進を引っ張っていくつもりで頑張っていきます。

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コメント(2)

Saga K&Sさん

戸井田さん 遠く九州佐賀の地からも応援しています!!

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REDさん

新しく作られた部署での仕事、どんどんチャレンジ出来て楽しそうですね。応援しています!

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