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「ORタイヤを感じる会」より良いタイヤ創りに拘るために

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3月に静岡県富士市の施工技術総合研究所で実施された「ORタイヤを感じる会」。
この会は、鉱山・建設車両用タイヤ(以下、ORタイヤ)の開発、設計、技術サービスに携わる皆さんが、建設車両を運転してタイヤの性能を肌で感じることで、「タイヤへの感度を上げ、徹底的に『より良いタイヤ創りに拘る』こと」を目的に開催されました。

新しい価値を生み出すために

今回初めて開催された 「ORタイヤを感じる会」について、中小型建設車両用ORタイヤ開発を担う(株)ブリヂストン タイヤ開発第2部門 鉱山・産業・建機タイヤ設計第4課長 千代田 明さんにお話しを伺いました。
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(株)ブリヂストン タイヤ開発第2部門 鉱山・産業・建機タイヤ設計第4課長
千代田 明さん

Arrow編集部 今回の「ORタイヤを感じる会」は初めて開催されたと聞きました。参加された皆さんが自分たちで建設車両を運転されるんですね。

千代田さん そうなんです。この会は、「最高の品質で社会に貢献」するために、タイヤの性能を肌で感じることでタイヤへの感度を上げ、徹底的に「より良いタイヤ創りに拘る」取り組みの1つとして開催しました。私たちは、お客様が思いもしなかった価値を生み出し、「断トツ商品」で喜んでいただく、歓喜(WOW)していただけるような新たな価値提供に取り組んでいます。
この価値提供の実現のためには、私たち自身が従来の発想にとらわれない新しい取り組みを行う必要があると考え、新たな着想を得るための取り組みの1つとして、今回「ORタイヤを感じる会」を企画しました。

Arrow編集部 新しい価値を生み出すための取り組みなんですね。

千代田さん 皆さんご存じないかもしれませんが、中小型建設車両は一人乗りなので、大型・超大型ダンプトラックなどの大型建設車両などと違って、同乗しタイヤ性能を体感することができなかったんです。
そのため、タイヤの性能だけでなく、建設車両を体感することもできませんでしたが、2025年の製品・生産技術 開発管掌の基本方針として掲げるWinner’s Culture(できなかった理由を述べるのではなく、うまくいくにはどうすべきかを、みんなで徹底的に考える)に基づき、従来の常識では不可能と思われることを可能にすべく、みんなで徹底的に考えました。その結果、より良いタイヤ創りに拘り、「断トツ商品」でお客様に歓喜(WOW)していただくための新たな着想を得るためには、オペレーターがどのように感じているかなど、情報やデータでは測ることのできない“感覚”を理解する必要があるという結論に至ったんです。
そしてこれを一人の技術者だけでなく、組織として取り組むことで、市場・お客様が想像できなかった市場価値・顧客価値への気づきや発想のブレークスルーを起こすことができると考えました。組織として取り組むにあたっては、(株)ブリヂストン タイヤ開発第2部門長の伊藤 貴弘さんの強い後押しもあり、全員で大型特殊免許を取得するに至りました。
また、建設車両の重量に耐えうる強度の高いコンクリート路面のテストコースは非常に少なく、かつ100メートル以上の直線路を有したテストコースは全国でも希少です。さらに建設車両のレンタル交渉・契約手続きなど、これら要件を全て満たした環境の整備は容易ではありませんでしたが、根気良く、開発チーム全員でこれらを一つひとつ地道にクリアしていくことで、この会を実現しました。

※大型特殊免許:ホイールローダー、クレーン車、ブルドーザーなどの特殊な大型自動車で公道を走るための免許。 大型特殊免許を取得すると、全長12メートル以下×全幅2.5メートル以下×全高3.8メートル以下の特殊車両が運転でき、小型特殊自動車や原動機付自転車の公道運転も可能になります。

Arrow編集部 現物現場の取り組みなんですね。ぜひ皆さんが感じたタイヤ性能を教えてください!

机上のデータで測れない違いを体感

コマツ社製のホイールローダー(WA200)を使って、全4種のタイヤ×内圧2種の違いを体感。
実際の作業環境の走行速度である約10km/hから、作業現場~車庫間の移動を想定した約30km/hの速度で走行し、運転した際に感じる操縦安定性能や振動性能を評価しました。

千代田さんにカメラを装着してもらい、振動の感じ方を解説していただきました。(装着タイヤ:VJT)
※安全を最優先し、両手が塞がらない状態でカメラを装着し撮影しています。
運転を終えた皆さんに感想を聞きました。
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(株)ブリヂストン タイヤ開発第2部門 鉱山・産業・建機タイヤ設計第4課長
千代田 明さん

今回試乗したタイヤ4種の性能差はもちろんですが、オペレーターにとって振動がどれだけ負担に感じるのかなど、実際に体感することでしか理解できない情報をたくさん得ることができました。タイヤ設計にダイレクトに参考になる、これ以上ない機会となりました。

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(株)ブリヂストン タイヤ開発第2部門 鉱山・産業・建機タイヤ設計第4課
藤原 慎之輔さん

タイヤは路面と車両をつなぐ唯一の接点ですが、ほんの数メートル走行しただけで、速度による振動性能や室内音の感じ方の違いをはっきり理解することができ、タイヤ性能に対する感度がさらに上がりました。新たな気づきや視点を得ることで今後は開発の質をさらに高め、「断トツ」のタイヤ開発につなげていきたいです。

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(株)ブリヂストン 鉱山・産業・建機タイヤ開発第2部
吉田 幸代さん

以前トラック・バス用タイヤを担当していた際はタイヤ性能を体感する機会はありましたが、中小型建設車両では叶わないと思っていたので、自分で操縦して体感できたことが感慨深いです。「下から突き上げる感覚」「ガタガタする感覚」など、データからでは読み取ることができない、乗ってみないと理解することのできない振動の違いを感じることができました。

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(株)ブリヂストン 鉱山・産業・建機タイヤ開発第2部
萩原 由紀恵さん

中小型建設車両が一人乗りということもあって「乗ることはできない」、「タイヤの性能を実際に体感することはできない」と思っていました。今回開発チーム全員の取り組みとして免許取得の話を頂いたときは、これまでにない喜びを感じました。自分が携わるタイヤの性能を肌で感じることができ感動しました。

より良いタイヤ創りに拘るために

最後に(株)ブリヂストン 鉱山・産業・建機タイヤ開発第2部長の森 新さんに、運転した感想と「ORタイヤを感じる会」の今後の展望について伺いました。
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(株)ブリヂストン
タイヤ開発第2部門 鉱山・産業・建機タイヤ開発第2部長 森 新さん

これまで定量化することが難しかった情報も、実際に自分の手で運転し体感することで、腹の底から理解することができました。
現在はプロジェクトという形でチームを組み、チーム全員が免許を取得し、“現物現場”で体感する輪を拡げています。設計者一人ひとりが感性を研ぎ澄まし、より良いタイヤ創りに拘り、何ができるか徹底的に考え、お客様の期待を超える「断トツ」のタイヤを開発できる、そんなチームを目指していきたいです。


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コメント(6)

REDさん

現場現物で現実を感じる会、とても大切なことだと思います。
これからも継続していただきたいと思います。

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ktさん

「定量化することが難しかった情報も、実際に自分の手で運転し体感することで、腹の底から理解」
真に現物現場

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シンチャオさん

とても素敵なイベントですね。他の従業員にも参加の機会があると嬉しいです。メーカーとして、モノ作りは中枢にあり、体感することで、自社への誇りを感じることが出来ると思いました!

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仮眠ライダーさん

開発した製品を自分の手で確かめる、なんて素敵な取り組みでしょう!
他の方がコメントされているように、現物現場の鑑ですね。
ダイアン津田よろしくスーを差し上げます!!!

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ぴんさん

正に現物現場のお手本のような取り組みですね。TBやACでも運転出来たらいいですね・・・・!

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YYさん

中小型OR開発チームらしい、とても素晴らしい取り組みと感じました!!
開発者自らが顧客価値を理解することは、アジャイル開発の肝ですよね。今後も、中小型OR開発の特性・特徴を活かして、小さく、早くPDCAを回し、顧客に刺さる製品を世の中に出していって下さい!!

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