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ただのマイナーチェンジではない。最高のBLIZZAK WZ-1をつくるために

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商品設計基盤技術「ENLITEN」を搭載した乗用車用スタッドレスタイヤ「BLIZZAK WZ-1」(以下、「WZ-1」)の販売が今年の9月から始まりました。従来品「BLIZZAK VRX3」(以下、「VRX3」)からENLITEN搭載で生まれ変わった「WZ-1」について、関係者の皆さんにお話を伺いました。
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ブリヂストンタイヤソリューションジャパン(株)    
商品企画本部 消費財商品企画部

犬飼 知樹さん

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(株)ブリヂストン
ENLITEN製品企画部門 PSタイヤ製品企画第2部    

佐々木 達彦さん

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(株)ブリヂストン
タイヤ開発第3部門 ウィンタータイヤモジュール設計課

中田 達也さん

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(株)ブリヂストン
実車試験部 実車試験第3課             

今村 文博さん

皆の思いは一つ 「ICEブレーキ性能 10%以上短縮」の達成に向けて

Arrow編集部 「WZ-1」の特長、従来品からの変化を教えてください。

犬飼さん 「WZ-1」は、「ICEコントロール性能」「あらゆる路面における高いパフォーマンス性能」「サステナビリティ性能」の3点に特に大きな強みがあります。これらの性能はお客様からの強いニーズがあり、商品企画の段階で目指すコンセプトに織り込まれていました。そして、今回から商品名が「VRX4」ではなく、「WZ-1」と新たに変わりましたが、これは「氷雪上性能」と「サステナビリティ」という2つの最高の技術“Double Zenith”(2つの頂)を掛け合わせた名前です。

佐々木さん 従来のスタッドレスタイヤとの大きな違いは、ENLITENを搭載したことです。「薄く・軽く・円く」タイヤをつくることで、あらゆる基本性能を最大化し、その上で犬飼さんに触れていただいた3つの強みを極めています。特長を説明するのは簡単ですが、モジュール設計を担当された中田さんは、特に苦労が大きかったと思います。

中田さん そうですね、私にとって初めて担当したスタッドレスタイヤが「WZ-1」だったのですが、既に高性能だった「VRX3」から、ICEブレーキ性能を10%以上短縮するのは別次元の話。「どのように実現するか…」と頭を悩ませました。これまでの考え方では超えられないハードルだったので、先入観にとらわれず、さまざまなアプローチを意識しました。
犬飼さん お客様の期待に応えるためには「VRX3」のマイナーチェンジではいけないというのは関係者の総意でした。とはいえ、中田さんの言うとおり「ICEブレーキ性能 10%以上短縮」は技術的にはとても高いハードル。大きなプレッシャーはありましたが、「必ず実現させなければいけない」と、皆の思いはひとつでした。

犬飼さん「『ICEブレーキ性能 10%以上短縮』は『必ず実現させなければいけない』と、皆の思いはひとつでした」

数多くの新しい技術で高いハードルをクリア

Arrow編集部 既に高い「ICEコントロール性能」を有していた「VRX3」から、さらに大きく性能を上げていく必要があったということですね。どのようにこのハードルをクリアしたのでしょうか?

中田さん 「ICEコントロール性能」向上の鍵となった技術の1つが、新しいトレッドパタンです。氷上でもすべらない、安心感のあるコントロール性を実現するためには、すべりの原因となる「氷上の水」をいかに除去できるかが重要になります。今回は新たに「L字タンクサイプ」を導入し、「水を導く」ことでタイヤと路面との接地面への水の浸入を抑制しつつ、残った水を吸い上げる「貯水」効果も組み合わせています。

佐々木さん また、ブリヂストンのスタッドレスタイヤを支える発泡ゴムの刷新も大きく寄与しています。今回は「Wコンタクト発泡ゴム」を採用していますが、やわらかいゴムが氷にしっかり密着し、加えてゴムの気泡が氷上の水をしっかりと除去。それだけではなく、今回新たに配合した親水性向上ポリマーが、接地面に残ったわずかな水もグリップ力に変換します。発泡ゴムによる水の除去がもたらす「タイヤと氷のコンタクト」と、親水性向上ポリマーによる「残った水とのコンタクト」、これらの2つの効果がWコンタクトの名前の由来です。
Arrow編集部 新技術で「ICEコントロール性能」の向上を実現したんですね。「あらゆる路面における高いパフォーマンス性能」「サステナビリティ性能」についてはいかがでしょうか?

犬飼さん 日本の冬道は地域や場所、天候、気温により多様に変化することが特徴ですが、近年はこの傾向がさらに顕著になっています。そのような環境において、「WZ-1」では、圧雪やスノー、シャーベット状といった、冬季特有の路面環境だけでなく、ウェットやドライの路面でも高いパフォーマンスを発揮できることが大きなポイントの1つです。一般的にスタッドレスタイヤは夏タイヤに比べるとウェット、ドライ路面での性能は劣ってしまうという特徴がありますが、ブリヂストンはVRXシリーズからこの課題に取り組んでおり、「VRX3」の時点でお客様から既に高い評価を頂いておりました。今回の「WZ-1」では新たに「WZ Motionライン」を採用。これは「REGNO GR-XIII」に搭載されている、ケースライン最適化技術をブリザック用にカスタマイズして生まれたもので、この技術と、先の「L字タンクサイプ」技術によって接地を最適化することで、ドライ路面やウェット路面でも高次元な性能を発揮することができます。
佐々木さん 夏タイヤとスタッドレスタイヤという違いはありますが、前例である「REGNO GR-XIII」の技術を有効に活用できたことも「WZ-1」をつくりあげる上では大きかったですね。

犬飼さん また、スタッドレスタイヤの使用期間が長期化しているというお客様の傾向から、性能の持続性が商品を選ばれる際の重要ポイントの1つであることが分かっていました。タイヤのやわらかさに寄与する「ロングステイプルポリマー」の配合量を増やすことで、ドライバーにとっての安心感につながる氷上性能の持続性アップを実現しました。「WZ-1」を長期間ご利用いただくことで、タイヤの廃棄量削減にもつながり、サステナビリティの面でも貢献できます。

狙った性能が実現できているかを確かめる 緊張が走る実車評価

Arrow編集部 「REGNO GR-XIII」の開発を通じて得られたノウハウや、ポリマーの配合量の工夫もあったということですね。実際にタイヤの性能へ反映させていくことは大変だったのではないでしょうか?

中田さん 「ある工夫をすると『ICEコントロール性能』は良くなる。だけど、『ドライ性能』が落ちてしまう」そのようなことが起きないように、「ICEコントロール性能」は最優先にしつつ、全方位的に性能バランスがとれるような、ゴムとトレッドパタンの相性の良い組み合わせを導き出すのに、特に苦労しました。あらゆる路面で効果を発揮するペアを、数多くの組み合わせから絞り込んでいき、そこから試作を行うのですが、その数は、従来品よりもはるかに多かったですね。試作の都度、ゴムを配合し、試作タイヤとして形にしてくださった皆さんには本当に感謝しています。そして実車試験部の今村さんにも数えきれない程、試乗による官能評価を行っていただきました。

「『ICEコントロール性能』は最優先にしつつ、全方位的に性能バランスがとれるような、ゴムとトレッドパタンの相性の良い組み合わせを導き出すのに、特に苦労しました」

今村さん 試作タイヤは、私が全て実車評価を行いましたが、改めて思い返すと、とんでもない回数だったなと思います。中田さんには何度も評価の場に来ていただき、試験車に同乗していただきました。自分で言うのもなんですが、本当に自分たちを労ってあげたいです(笑)

中田さん 評価中は、今村さんの顔を横目でずっと見ていました(笑)。もちろん、評価前に小平でさまざまなデータを取って分かってはいるのですが、今村さんによる官能評価の結果はどうか。走行中ずっと無言の今村さんが言葉を発してくれるまでのあの時間は、いつもドキドキしていました。

今村さん それぞれの試作タイヤをどういった狙いでつくっているか、先入観が入らないよう、中田さんからスペックの変更点を聞かずに試験に臨んでいましたね。試験後、助手席の中田さんと答え合わせをするんですが、お互いにとってはまさに緊張の瞬間(笑)。評価の感触を言葉で伝えるのですが、中田さんが狙っている性能が具現化されているか、不安な気持ちもあるのですが、狙いと評価が一致した時の感動はひとしおで。私にとってはやりがいも大きかったです。

今村さん「中田さんの狙いと官能評価の結果が一致した時の感動はひとしおでした」

たくさんの仲間たちとつくりあげた最高の「WZ-1」

Arrow編集部 開発開始から販売までさまざまな苦労があったと思いますが、特に印象に残っていることを教えてください。

今村さん 最初は、「あの『VRX3』を本当に超えられるのか?」と漠然とした不安がありました。しかし、開発メンバーから託された数々の試作タイヤの評価を重ねるごとに、性能が上がっていると感じられて。最終的な仕様が固まった時は、「お客様に胸を張って勧められるタイヤができた」と感慨深かったです。

中田さん 試作タイヤを実車に装着して試験をする際の環境づくりが印象に残っています。例えば氷上試験はスケートリンクで行うのですが、すべりやすい路面でテストするために、氷の上に水がある状態になるよう試験環境を調整します。ガチガチに凍ったスケートリンクから、この狙い通りの環境をつくることは本当に大変でしたね。

犬飼さん うれしかったことは、CMや広告などに出ていただいた佐藤琢磨さんを始めとしたレーシングドライバーの方々から、高い評価を頂いた時ですかね。普段からタイヤを極限の状態で使いこなしているレーシングドライバーの皆さんから、性能に関するお墨付きを頂けたのは、何よりも強い自信につながりました。

佐々木さん メディア向けの新商品発表会では、佐藤琢磨さん、原田雅彦さん、藤本美貴さんとのトークセッションにも参加させていただいたのですが、とにかく緊張しました(笑)。ただ、仲間たちと一緒に生み出した最高の商品を、皆さんと大きくPRできたことは本当にうれしかったです。たくさんの仲間たちとつくりあげた「WZ-1」。多くのお客様の冬道での安心・安全を支えてくれると思います。

「たくさんの仲間たちとつくりあげた最高の『WZ-1』。多くのお客様の冬道での安心・安全を支えてくれると思います」

メディア向け新商品発表会

7月に都内で行われた「WZ-1」お披露目の新商品発表会では、ブリヂストンタイヤソリューションジャパン(株) 代表取締役社長 久米 伸吾さん、商品企画本部長 徳屋 光伸さん、(株)ブリヂストン 常務役員 製品・生産技術 開発管掌 草野 亜希夫さんが登壇し、集まったメディアの皆様に「WZ-1」のコンセプトと概要、技術について説明を行いました。その後、北海道出身のタレントである藤本 美貴さん、レーシングドライバーの佐藤 琢磨さん、元スキージャンプ選手で全日本スキー連盟会長の原田 雅彦さん、そしてインタビューでもお話してくれた佐々木さんによるトークセッションが行われました。佐藤さん、原田さんからは試乗後の感動の声、藤本さんからは「早く乗りたい」と期待のメッセージを頂きました。

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コメント(1)

ひょおおさん

背反性能を1つも出さずに性能円を全てあげるENLITEN技術、とんでもないですね・・・おどろきました!ENLITENが導入される前と後では大違いですね。ENLITENを発案された方、本当にすごい!!!!

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