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安全は選ぶものではなく果たすべき責任 イタリアにおける若年層向け交通安全活動

イタリアにおいて、15歳から29歳までの若者の死因として最も多いのが交通事故です。この状況を改善すべく、イタリア南部で乗用車用タイヤを製造しているバリ工場、ローマの技術センター(以下、TCE)、ミラノにオフィスを置く販売部門の3つの拠点が、イタリア赤十字社(以下、ITRC)との共創で若年層向け交通安全活動を推進しています。今回はBGA2024の受賞テーマにもなったこの取り組みについて、関係者の皆さんにお話を伺いました。
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Bridgestone Italia Manufacturing S.p.A.

Aurelie Scarafinoさん

バリ工場内での従業員間コミュニケーションやCSR活動を担当。今回のテーマにおいては主に地域の方々や赤十字社との調整を実施。

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Bridgestone Europe NV/SA

Daniel Muroさん

TCEにて生産財タイヤの新技術に関する研究開発に従事する傍ら、CSR活動の推進も担当。今回の取り組みではプロジェクトマネージャーとして、企画の立案や赤十字社との調整を実施。

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Bridgestone Europe NV/SA

Jacques Capizziさん

欧州南部地域におけるPR・コミュニケーションマネージャーとして、社内外への広報や、パブリックアフェアーズ(※)を担当。今回のテーマにおいてもPRの専門性を活かしてプロジェクトを支援。
※ 企業などが政府や世論に対して、社会の機運醸成やルール形成のために働きかける活動

安全は選択するものではなく、全ての人々が果たすべき責任

Arrow編集部 改めて若年層向け交通安全活動の概要と、これを推進した背景・理由を教えてください。

Scarafinoさん 若年層の方に交通安全の重要性を伝えるために、イベントの開催や学校での講義などを精力的に実施しています。昨年の時点で、ITRCとブリヂストン合わせて約2,500名のボランティアがこのプログラムに携わり、約30,000人の若者に交通安全の大切さを伝えることができました。
私にとって交通安全活動は、果たすべき大きな使命です。22歳のとき、同級生2人をバイクの事故で亡くしました。それ以来、この辛い経験を若い人たちに伝え続けてきました。大切なのは事故の恐怖ではなく、気づきを与えること。安全は選択するものではなく、全ての人々が果たすべき責任なのです。

Muroさん 私はブリヂストンの一員である前に子どもを持つ1人の親として、イタリアの多くの若者たちが交通事故で命を落としている状況を何とかしなければという強い責任感を持っており、交通安全の重要性を強く感じています。

Capizziさん ブリヂストンというグローバル企業の一員として、社会に良い影響を与えていく責任があると考えています。交通安全はブリヂストンの事業にも密接に関わるテーマです。モビリティに携わる企業の専門性を活かしつつ、従業員の想いを伝えることで、社会に大きく貢献できると思います。このプログラムでは、バリ工場、TCE、販売拠点の3拠点が連携することで、大きなシナジーを生むことを目指しました。

若い人たちと同じ目線で向き合うことで心の扉を開いていく

Arrow編集部 このプロジェクトを進める上で苦労した点や、現在も続いている課題を教えてください。

Scarafinoさん 思春期を過ごす若者たちは、大人たちの言葉に反発する気持ちを少なからず持っています。ルールをただ押し付けようとするのではなく、気づきを与えるきっかけをどう作るか、これが一番の課題だと思っています。
若者たちと向き合うには、何よりも共感する気持ちを大切にすることが重要です。彼らの好きなSNSや音楽、映画といった文化に関心を持ち、彼らが受け入れてくれる言葉で語りかける。単なる講義にならないように、同じ目線でコミュニケーションをすることが、彼らの心を開くためには必要です。

イタリア国内の3つの拠点、そして赤十字社との共創

Arrow編集部 若い人たちに安全の重要性を伝えるためには、まず彼らの心を開くことが大切ということですね。他に苦労されたことはありますか?

Capizziさん ITRCへの寄付金の捻出についても、頭を悩ませたことの1つでした。活動が進むにつれ、当初予定していた規模を超えたプロジェクトとなり、費用面が活動を続ける上での大きな課題でした。

Muroさん Capizziさんの言うとおり、難しい問題でしたが、ITRCと共創関係を築けたことが解決につながりました。ブリヂストンが寄付金を納めるだけの単なるスポンサーにならないよう、ITRCと密に連携し、プログラムを一緒に企画できたことが、限られた予算内で柔軟に取り組みを継続することにつながりました。お互いの信頼関係のおかげで、今も無理のない範囲でプロジェクトを継続できています。

Capizziさん ブリヂストンの中での連携だけでなく、ITRCとの共創があったからこそ乗り越えられたのだと思います。会社側の理解が得られていることも大きく、その後の活動のための予算化も順調に進んでいます。

イベントに参加するCapizziさん(写真右側)

地域の活動がイタリア全体に広がるプロジェクトに

Arrow編集部 取り組みの成果や、BGA2024受賞時の感想を教えてください。

Scarafinoさん 世界中の数多くの仲間たちが、それぞれの持ち場や立場で素晴らしい取り組みを行っていますので、我々のプロジェクトが受賞できたことは大きな誇りです。

Muroさん 当初は限られた地域での小さな活動でしたが、会社側のサポートもあり、イタリア全体に広がるプロジェクトにまで拡大することができました。多くの従業員ボランティアや地域社会の方々が共感してくれ、この活動に熱心に参加してくれたため、単なるCSR活動の枠を超えたものになったと思います。BGAの受賞は、地道な努力が大きな成果につながった証で、私もとても誇りに思っています。

Capizziさん このプロジェクトは私たち自身のアイデアとリーダーシップ、そしてITRCとの信頼関係から生まれたものです。そういった活動が実を結び、BGAを受賞できたことは、ブリヂストンで働く一員として最高の瞬間だと感じました。
Arrow編集部 今後、このテーマをどのように発展させたいか、意気込みや目標を教えてください。

Scarafinoさん 今後もさらにより多くの人々に交通安全の重要性を伝えていきたいです。さまざまな方向性からこのプロジェクトの周知活動を進めているのですが、昨年時点でメディアの記事や私たちのSNSの閲覧数は約1,700万PVに達しています。最近では、ITRCとブリヂストンのボランティアが出演する動画もSNSで発信しています。この活動がさらに広まることで、また新しい仲間との出会いにつながることを楽しみにしています。

Muroさん Scarafinoさんの言うとおり、交通事故が起きた際の対応を学べる動画や、タイヤの日常点検の方法を伝える動画も制作していますので、SNSを活用してこれらの情報をより広く発信し、社会により大きな影響を与えていきたいですね。

Capizziさん 従業員ボランティアに参加してくれた方の多くが、それ以降の活動にも繰り返し参加してくれています。今後もこのプロジェクトを進化させ、より多くの従業員がボランティアとして参加できる機会をもっともっと増やしていきたいです。

団結することが未来への大きな原動力に

Arrow編集部 改めて、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

Muroさん 私たちのように、複数のチームが協力し合えば、大きなプロジェクトを動かすことができます。地域社会や共創パートナーとも連携し、リソースを共有することで大きな成果を生み出すことができます。

Scarafinoさん このプロジェクトを推進してくれた全ての仲間に感謝します。団結することは未来への大きな原動力となります。私たちの団結力はまるでブリヂストンのタイヤのように最高の品質で、大きな信頼を得られていると信じています。このプロジェクトを通じて、交通事故にあう人が少しでも減っていけばと願っています。

Capizziさん このプロジェクトはイタリアだけでなく、世界中に広げていけるものだと思いますし、私たちの経験を別の場所でも活かせると信じています。交通安全の大切さを広く伝えたい方がいれば、ぜひご相談ください。お待ちしています。

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