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巨大なタイヤを支える、ナノレベルの表面制御技術

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ブリヂストンの主力製品であるタイヤ。このタイヤにはさまざまな素材が使われており、それぞれが欠かせない役割を担っていますが、今回は、空気圧を保ち、車体を支えるタイヤの骨格「構造材」の1つ、スチールコードの事例をご紹介します。

タイヤは、種類によって支える荷重や求められる軽さ、しなやかさなどが異なります。乗用車用では繊維とスチールを組み合わせ、トラック・バス用や鉱山・建設車両用では、より大きな荷重に耐えるスチールコードを使用。航空機用では、高い強度と軽さを両立するため、主に繊維が使われます。スチールコードも1種類ではなく、タイヤの大きさや使われ方に応じて、鋼線の太さや本数、撚り方を変えています。
鉱山・建設車両用タイヤは、大きな車体と積載物を支えながら走行しますが、走行中には大きな荷重や衝撃が繰り返し掛かるため、タイヤには高い耐久性が求められます。
ブリヂストンが開発した鉱山・建設車両用タイヤ「Bridgestone MASTERCORE」(以下、マスターコア)は、ブリヂストン独自の技術を結集し、過酷な使用環境を支える高い耐久性能を実現。ゴム配合やパタン設計の工夫に加え、スチールコード(以下、SC)とゴムの接着を高める独自技術「Metal Surface Coating Technology」(以下、MSC技術)が採用されていますが、このMCS技術によりマスターコアの開発と量産化に携わった皆さんにお話を伺いました。
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(株)ブリヂストン
補強材開発部 スチールコード生産技術開発課 主査

大野 義昭さん

佐賀工場にてMSC技術の製造工程への落とし込み、マスターコアの量産化を担当

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(株)ブリヂストン
補強材開発部 OR・AC補強材開発課

土屋 真悟さん

MSC技術の開発を担当

100トン級の荷重を支えるタイヤを、ナノレベルの表面制御が支える

大野さん ブリヂストンの国内唯一のSC製造拠点である佐賀工場では、1日におよそ8万km、およそ地球2周分と同じ長さのSCを生産しています。SCは、さまざまなタイヤの骨格としての役割を担っていますが、超大型の鉱山・建設車両用タイヤには、100トン級の荷重を支える強度が求められます。走行中はタイヤ内部が高温になり、SCとゴムの接着部分にも大きな負荷が掛かりますが、接着部分が壊れれば、内部に空洞が生じ、タイヤの破損につながることもあります。

土屋さん MSC技術は、こうした過酷な環境でも接着を長く維持するため、SCの表面をナノレベルで制御する技術です。従来はゴムに配合していた接着機能の一部をSC側へ持たせ、ゴムと接着しやすい表面をつくることで、鉱山・建設車両用タイヤに求められる耐久性を実現しています。

土屋さん

新たな表面制御技術を、何万メートルものコードへ

土屋さん MSC技術によるマスターコアの量産実現で難しかったポイントは、SC表面への処理を、何万メートルにもわたって均一に施し、安定して生産することでした。ゴムとSCの接着強度はタイヤの安全性に直結するため、市場での走行試験や耐久性の確認も含め、慎重に開発を進める必要があります。構想から製品化までには約20年を要し、多くの担当者が開発を受け継いできました。

大野さん マスターコアの製造工程には、従来のSC製造では通常行わないプロセスも含まれています。試作設備を使って何度もテストを重ね、その結果を基に量産ラインへ展開していきました。生産性の観点だけでなく、設備保守に向けた課題など、一つひとつクリアしていきました。

大野さん

開発部門と製造現場が、互いに提案しながら実用化

土屋さん SC開発は、アイデアを基に小ロットでサンプルを試作し、ゴムとの接着性やSCとしての特性を評価するところから始まります。その後、タイヤに組み込んで評価し、結果を開発へフィードバックします。SC単体ではなく、タイヤの中でどのように機能するかまで、素早く確認できることが、内製工場を持つブリヂストンの大きな強みです。

大野さん 佐賀工場では、タイヤの評価結果と工場側の課題を開発部門と共有しながら試作を繰り返しました。提案された方法での製造が難しい場合には、単に「できない」と返すのではなく、設備や製造工程を踏まえた別の方法を提案します。開発部門と工場が互いに情報を出し合い、タイヤへの効果と製造上の課題を確認しながら改良を重ねたことで、量産へつなげることができました。

ブリヂストンが成長していくために、これからも良いSCを目指し続ける

土屋さん 過酷な使用環境を支える高い耐久性能を実現したマスターコアは、自信を持ってお客様にご使用いただける素晴らしい商品です。ただ、現状に満足してしまってはブリヂストンの成長はありません。例えば、SCは鉄でできているので、ゴムよりも重量が重く、その分だけ燃費に影響します。同じ重さでより強度の高いSCを開発できれば、タイヤの重量を減らすことにもつながります。また、ゴムとSCの接着についても、現状より材料を減らしつつ接着強度を保つことで、コストや生産性に貢献できないかなど、まだまだ伸びる余地はあると思っています。

大野さん 「より速く、より長く走れるタイヤを、安く買いたい」というお客様のご要望に応え続けるために、これからもできることはまだまだあると思っています。SCはタイヤの外からは見えませんが、タイヤを支える骨格として不可欠なものです。これからもブリヂストンが競争優位性を保ち続けられるように、小平と佐賀工場、そして他の拠点や部門とも密に連携して、より良いSCをつくっていきたいですね。

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