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天然ゴムへの興味が私を突き動かした 謎を突き止めるための100日間

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ブリヂストンには、創業期から困難なことに「挑戦」し、「品質へのこだわり」を持ち、「現物現場」で「お客様の困りごとに寄り添う」というブリヂストンDNAを体現しながら、さまざまな立場や持ち場で日々、挑戦を続ける多くの仲間たちがいます。(株)ブリヂストンでは、挑戦意欲のある従業員の皆さんに挑戦の機会を提供したいという思いから、自分で選んだテーマに対し、課題や仮説の現場での検証、改善、解決に本業を離れて100日間取り組む「現場100日チャレンジプログラム」(以下、現場100日チャレンジ)を2023年より導入し、挑戦風土の醸成を図っています。

今回は、「天然ゴムの品質保証体制の強化に向けた実態調査」に取り組んだ、Bridgestone Singapore Pte. Ltd.(以下、BSSG)に赴任中の中山 豊さんにお話を伺いました。
Arrow編集部 現場100日チャレンジに参加する前、中山さんはどのような部署にいたのですか?

中山さん 私は当時、品質部門のG原材料・中材品質システム課に所属していました。品質という観点で、原材料サプライヤー様の品質管理体制のチェックや、原材料の品質管理の仕組み構築を担う部署です。タイヤには多くの原材料が用いられていますが、どうすれば今より安定した品質の原材料を工場に届けることができるかを考え、業務に従事していました。工場で安定した品質のタイヤ生産が行われるためには、原材料の安定した品質も不可欠であり、その実現のためにサプライヤー様の管理や仕組みの構築に注力していました。

Arrow編集部 現場100日チャレンジでは天然ゴムの調査に取り組まれたわけですが、その経緯を聞かせていただけますか?

中山さん ブリヂストンの「魅力的な商品」の1つに、鉱山・建設車両用タイヤのBridgestone MASTERCOREがあります。原材料の品質保証チームに赴任して早々、天然ゴムが関係する品質低下が検出されました。生産工程における品質チェックで正しく検出されたものですが、安定生産に向けて改善対応することとなりました。
この要因は既に先輩方の取り組みで知見があり、天然ゴムに含まれる「ある物質」(以下、原因物質)が多いと性能に影響が出ることがわかっていました。さらにデータを深掘りして要因を調べると、特に雨期に生産された天然ゴムでは、その原因物質の含有量が上昇しており、それと連動する形で品質低下が発生している事がわかりました。季節による原因物質の増加要因は何なのか?」、これらを突き止めなければ本質的な課題解決はできないと思い、天然ゴムの調査をさらに掘り下げて進めることにしました。
Arrow編集部 原因物質の含有量の変動について、原因を調べたいと思ったんですね。

中山さん そのとおりです。一方で当時の私は、天然ゴムがどのようなものなのか、どのようにつくられるのか、ほとんど知らない素人でした。「もっと知見がある方が調べた方が良いのではないか」と、弱気になることもありましたが、最終的には、まだまだ分からない部分が多い天然ゴムへの興味と、「この現象の原因を現物現場で調べてデータで証明したい」という気持ちが強くなり、現場100日チャレンジに手を挙げました。

ブリヂストンが運営している天然ゴムの内製農園や、天然ゴムサプライヤー様のもとへ訪問し、調査を進めることになったのですが、この分野に詳しい天然ゴムの調達チームやBSSGの皆様をはじめ、小平で天然ゴムを研究している材料開発統括部門の皆さんには多大なるサポートやアドバイスをいただきました。現場100日チャレンジ中だけでなく、チャレンジ期間が始まる前から支えてくださった皆さんには、この場を借りて御礼を申し上げたいです。

中山さん「農作物である天然ゴムへの興味と、『この現象の原因をデータで証明したい』という気持ちが強くなり、現場100日チャレンジに手を挙げました」

Arrow編集部 数多くの関係者が中山さんの挑戦を支えてくれたんですね。改めて取り組みの概要について教えていただけますか?

中山さん まず、天然ゴムについて少し説明をさせてください。ご存じの方も多いかもしれませんが、工場で目にする原材料の天然ゴム製品は、パラゴムノキの木から採取できる樹液(ラテックス)をもとにつくられます。木に切り込みを入れ(タッピング)、採取したラテックスを加工することで、原材料としての天然ゴムになるというわけです。

ラテックスはそのままにしておくと凝固してカップランプと呼ばれる塊になります。カップランプにはさまざまな異物が含まれているので、それを取り除くために破砕・洗浄を繰り返し、乾燥してブロック状に圧縮したものをTSR(Technically Specified Rubber)といいます。一方で、凝固させずにラテックスのまま回収してフィルターなどで異物を取り除き、加工工場で固めてシート状にしてから乾燥・燻製したものをRSS(Ribbed Smoked Sheet)といいます。

天然ゴムの代表的なものとして、この2種類があり、RSSに関しては一般的にシートに含まれる異物の量のみでグレードが分けられています。現地で実際に製造プロセスを見ると、より「天然ゴムは農作物なんだな」という印象が強くなりました。

ラテックスが採取されてからの加工プロセス

Arrow編集部 ラテックスを原料としているものの、TSRとRSSではその途中の製造プロセスが全く違うんですね…!

中山さん はい。そして今回着目したのはRSSですので、その製造プロセスのどこに原因物質の増加要因があるかを調査したのが私の取り組みです。

先程、雨季に生産された天然ゴムで原因物質の増加があったと申し上げましたが、仮説として次のようなことを考えていました。雨季に雨が降ると、ゴムの木の樹皮が濡れてタッピングしづらい、もしくは、ラテックスに雨が混ざるのを避けるために農家がタッピングをしないといった要因から、ラテックスの回収量が少なくなります。そのため、雨季にはラテックスを固めてから、燻製する前のゴムシートの状態で長期間備蓄することが多くなるということを聞いていました。通常よりも長い在庫備蓄期間中に、天然ゴム中のバクテリアが長く活動することで、原因物質が増加していると考えたのです。

これは1つの仮説でしたが、いずれにせよ、燻製工程でバクテリアが死滅するまでのどこかのプロセスでリードタイムが長期化することが影響していると考えていました。

雨季の影響で製造途中のRSSの備蓄期間(バクテリアの活動期間)が長期化し、天然ゴム中の原因物質が増加するという仮説(中山さんの現場100日チャレンジ報告資料より抜粋)

Arrow編集部 なるほど、タッピング後に燻製までのリードタイムが長くなってしまうと、バクテリアの影響で原因物質が増えるのではないかと仮説を立てたんですね。

中山さん 外部の天然ゴムサプライヤー様へのヒアリングでこの仮説を説明した際に、「中山さんの言うとおりかもしれない」と言っていただけました。普段、ラテックスを管理しながら天然ゴムをつくっている皆さんに理解いただけたことは、調査を始めるにあたり自信になりました。とはいえ、タッピング後、シートが燻製されるまでには複数のプロセスがありますし、要因がリードタイムだけではない可能性も十分に考えられました。このうちの「どこで」原因物質が増えているのかを特定するのは本当に大変でした。

チャレンジ期間中、さまざまな地域や拠点で条件を振って天然ゴムサンプルをつくっていただき、成分データを測っていったのですが、なかなか思うような仮説を立証するデータが得られず…。現地での聞き込みから、雨季にはラテックス収量が減少し、その影響で「ディーラータンクでの保管リードタイムが長くなる」という実態が見えてきました。ディーラーとは、複数の農家からラテックスを回収し、回収タンクが満量になるまで一時保管した後、シッパー工場へまとめて運搬する役割を担っていますが、タッピングからラテックスを凝固させるまでの時間が影響していると仮説を立てて、再度調査計画を組み直しました。

チャレンジ期間の終盤で「タッピング後、ラテックスを凝固させるまでの間」で原因物質が増えているというデータが揃ったときには、苦労が報われたような気持ちになりました。

タッピング後、ラテックスが凝固するまでの間で原因物質が増加していることを突き止めた(中山さんの現場100日チャレンジ報告資料より抜粋)

Arrow編集部 現場100日チャレンジ前に設定していた課題である、原因物質の増加要因を特定することができたんですね!

中山さん はい。ただ要因の特定だけでは原材料品質の安定化まで直ちに実現できるものではありません。季節による原因物質の増加要因の一部は突き止めることができましたが、安定化させる方法がないか、いくつか模索している状況です。天然ゴムという農作物は品質安定のコントロールが難しい対象であり、まだまだ課題も多いので、引き続き粘り強く取り組んでいく予定です。
Arrow編集部 その先の改善にまで着手しているんですね!改めて、中山さんが今回の現場100日チャレンジで得た学びや、これからの抱負について教えてください。

中山さん 現場100日チャレンジに参加する前、製造現場に原材料として運ばれてくる天然ゴムを見たことはありましたが、工場でつくられるような「工業品」という認識で見ていました。ただ、今回の挑戦を経て、天然ゴムが広大な自然の中でつくられる「農作物」なんだと強く実感することができました。天然ゴムは長いサプライチェーンを持つ、極めてコントロールが難しい原材料です。それまで原材料として「点」でしか見ていなかった天然ゴムについて、ラテックスの採取からさまざまなプロセスを経て、原材料になっていく様子を「線」として見ることができました。これもとても大きな経験だったと思います。

まだまだ、天然ゴムはわからないことだらけです。今回は1つの要素に注目しましたが、今後も未知の領域が広がっているかもしれません。天然ゴムは古くから使用されてきた一方で、今でも新たな発見がある原材料です。合成ゴムやスチールコードなど主力原材料が工業製品であるなかで、農作物である天然ゴムは非常にユニークな存在。そのため、品質保証においても固定観念にとらわれず柔軟な発想が大切だと感じています。現在赴任しているBSSGでも、引き続き現物現場で天然ゴムを追いかけ、生産現場での品質向上に努めつつ、日々、学んでいます。ブリヂストンとして天然ゴムに向きあう仲間が多くいて、私もそのうちの1人として、これからも挑戦を続け、将来は幅広い原材料の品質保証体制強化に貢献できる人財になりたいです。

Arrow編集部 中山さんの挑戦はまだ始まったばかりということですね!これからも応援しています!
【現場100日チャレンジプログラム事務局より】
(株)ブリヂストンでは 2023年4月以降、計32名の開発企画職の皆さんが、海外を含むさまざまな現場で100日チャレンジに取り組んでいます。普段から自身の取り組みたいことや課題テーマの構想などを職場内で共有し合い、挑戦する仲間を後押しする気持ちを持つことが大切だと考えています。日々の業務において課題認識はしているものの、なかなか打破できないと感じている課題をお持ちの方も多くいらっしゃると思います。100日間、既存業務・組織から離れ、自分で立てた課題・仮説の現場での調査・検証、改善、解決に取り組みたいという熱い想いをお持ちの方、ぜひ次回の参加をご検討ください!

現場100日チャレンジプログラム概要(社内イントラサイト)

なお、現場100日チャレンジプログラムは2024年からBridgestone Asia Pacific Pte. Ltd.(BSAPIC)でも導入開始。今後順次グローバルへ拡大し、仲間たちの挑戦を後押ししていきます。
これまでの挑戦者へのインタビュー記事は末尾のリンクからご覧ください!

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